あしずり
土讃線 高知〜中村・宿毛間
7往復
2000系4往復/2700系3往復

60年の歴史を持つ、土讃線伝統の「たたき上げ」列車




あしずり10号(左)/あしずり5号(右)
土讃線 須崎駅
2022年10月5日

あしずり3号
土讃線 高知駅
2022年10月5日




<概況>

 高知県西部を走るローカル特急。
 元をたどれば1961年に登場した準急「足摺」まで遡り、既に半世紀以上の長い歴史を持つ、「南風」と並ぶ「たたき上げ」の出世列車である。


 車両は2700系および2000系で、1往復を除き全てモノクラス編成で高知〜中村間6往復と高知〜宿毛間1往復の、合わせて7往復が設定されている。
 このうち高知〜中村間の2往復と高知〜宿毛間の1往復が2700系で、それ以外は2000系での運転となる。
 グリーン車付き編成は、2700系の高知〜中村間1往復のみである。


 なお、現在は2700系の絶対数が不足しているため、多客期には2700系列車を2000系が代走することがある。


号数行先車種備考
1号中村2000系
3号中村2000系
5号中村2700系
7号宿毛2700系
9号中村2000系
11号中村2000系
13号中村2700系
号数始発車種備考
2号中村2700系
4号中村2000系
6号中村2000系
8号宿毛2700系
10号中村2000系
12号中村2000系
14号中村2700系



2000系気動車座席番号表
2000系気動車の室内

2700系気動車座席番号表
27000系気動車の室内




<HISTORY>

(準急・急行時代)

 1961年4月15日改正で、準急「土佐」1往復を高知〜窪川間延長する形で、準急「足摺」として登場。


 1963年2月改正で2往復に増発。うち1往復は、阿波池田〜高知間で準急「よしの川」を併結していた。
 同年12月には中村線・窪川〜土佐佐賀間が開通し、土佐佐賀まで運転区間が延長された。


 1965年3月改正で3往復に増発。


 1966年3月に急行に格上げされた。

 この間、一部の列車は多度津〜阿波池田間で準急「予土」「いしづち」を、阿波池田〜高知間で準急「よしの川」を併結するなど、他の列車との分割・併合が頻繁に行われていた。
 また、当時窪川方面行きの急行が「南風」「足摺」と2つあったが、停車駅を絞った「南風」に対して「足摺」は停車駅を増やして差別化されていた。
 (例:善通寺駅については「南風」は全列車通過、「足摺」は全列車停車となっていた)


 1968年10月1日改正では「南風」を統合して7往復体制に強化され、愛称名もこのときから平仮名書きの「あしずり」となった。


 1970年10月改正では、中村線(現・土佐くろしお鉄道中村線)の全通に伴って運転区間が中村まで延長された。本数は7往復体制のままで、急行列車としての最盛期に達した。


 1972年3月15日改正では1往復が特急に格上げされて「南風」化されたが、1往復の純増があったため7往復体制を維持。


 1975年3月改正で1往復が「南風」に格上げされたほか、1往復が高知折り返しとなって「土佐」化された。
 逆に、上り「南風」1本が中村始発から高知始発に変更となり、これに接続する中村〜高知間の上り1本が増発された。
 結果、下り5本/上り6本の運転となる。


 1980年10月1日改正では、下り始発と上り最終の1往復が高松〜高知間廃止されて、高知〜中村間の運転となった。


特急としては先輩に当たる「南風」と交換

あしずり3号(右)
土讃本線 讃岐財田駅
1982年3月



 1982年11月15日改正で、高松〜中村間の下り1本が高知止まりとなって「土佐」化されたほか、中村〜高知間の上り1本が廃止されて、下り4本/上り5本となった。
 廃止された上り列車は、宇野で寝台特急「瀬戸」に接続する「南風」に、高知で接続する列車であった。



あしずり4号
予讃本線 多度津駅
1984年1月29日
先頭はエアサス装備のキハ57形


イラストマーク付きになった先輩特急を待避

あしずり3号(右)
土讃本線 讃岐財田駅
1985年3月


 1984年2月1日改正で、中村〜高知間の上り1本が普通列車に格下げされ、4往復の運転となった。



あしずり5号
予讃本線 高松駅
1986年3月26日


 1986年11月1日改正で高松〜中村間1往復が「南風」に格上げされたほか、須崎始発の上り1本が須崎〜高知間普通列車に格下げされて「土佐」化された。代わりに上り1本が新ダイヤで増発され、結局3往復となる。


 1987年3月23日改正では、下り「南風3号」のダイヤ変更によって高松〜中村間下り1本が「南風」から「あしずり」に立て替えられた。
 結果、高知〜中村間下り1本/高松〜中村間3往復の体制となる。


 1988年4月10日ダイヤ改正では、下り2本が高松〜高知間「しまんと」化されたほか、中村線の第3セクター化に伴って全列車の窪川〜中村間が普通列車又は快速列車に格下げとなった。
 この時点で「あしずり」は高松〜中村間下り1本/上り3本、高知〜中村間下りのみ3本という変則的な運転形態となった。


 1989年7月22日改正で高松〜高知間が特急化されて廃止され、高知〜中村間に下り3本/上り2本の運転となる。



(特急化)

 1990年11月21日の2000系量産車登場に伴うダイヤ改正で特急に格上げされた。車輌はキハ181系で高知〜中村間に下り1本と、キハ185系で高知〜中村間に1往復が設定され、いずれも「しまんと」間合い運用による高松運転所所属車であった。
 当初よりエル特急指定であった。


 1991年11月21日改正では、「しまんと」の末端区間を統合するなどして、高知〜中村間に3往復の運転となった。
 2000系はまだ投入されず、全てキハ181系で運転された。


短期間しか見られなかったキハ181系同士の交換

あしずり3号(左)/あしずり4号(右)
土讃線 斗賀野駅
1993年2月13日


高知駅で並んだ、2000形と2150形の「しまんと」と、キハ181系の「あしずり」

土讃線 高知駅
1993年2月14日



あしずり4号(右奥は しまんと10号)
土讃線 高知駅
1993年2月14日


 1993年3月18日改正では、運転時間帯等の見直しにより、高知〜中村間に下り2本/上り1本の運転となり、全列車が予讃線への8000系量産車投入によって捻出された2000系に置き換えられた。


 1993年10月1日改正では、「しまんと」下り1本が高知で系統分割されて、「あしずり」化された。
 これにより、高知〜中村間に下り3本/上り1本の運転となった。
 ちなみに、当該の列車は「しまんと」として高知到着後に、先頭に2000形を連結してそのまま「あしずり」になるという変わった列車であった。


 1994年12月3日改正では、さらに上り1本が「しまんと」の系統分割によって「あしずり」化された。
 結果、高知〜中村間に下り3本/上り2本という体制となった。



あしずり5号
土讃線 高知駅
1996年9月9日


 1997年10月1日に土佐くろしお鉄道・中村〜宿毛間の開業に伴って、全列車が宿毛まで延長された。
 これにより、高知〜宿毛間に下り3本/上り2本となった。


 1997年11月29日改正では、本数に変更はないが「南風」「しまんと」のダイヤ変更によってスジの立て替え等が行われ、高知〜宿毛間2往復、高知〜中村間下り1本の体制となった。
 また、このときから「エル特急」の呼称をやめている。


 1998年3月14日改正では、「南風」増発に伴うダイヤ変更により、高知〜宿毛間下り3本/上り2本、高知〜中村間下りのみ1本の運行となった。
 下り1本を除いた全列車にグリーン車が連結された。


 1998年10月3日改正で、高知〜宿毛間下り3本/上り1本、高知〜中村間下りのみ1本の運行に変更となった。
 グリーン車は下り1本を除く全列車に連結された。


この当時、TSEは中間の2201形を抜いた2両編成での運用があった

あしずり3号
土讃線 高知駅
1998年12月27日


 1999年3月13日改正で「南風」下り1本が系統分離されて「あしずり」化された。
 結果、高知〜宿毛間下り3本/上り1本、高知〜中村間下りのみ2本となった。


この当時、2150+2100の2連で到着した「しまんと」の前に
2000を繋いで「あしずり」に仕立てる定期運用もあった

あしずり3号
土讃線 高知駅
2000年1月31日


 2001年3月3日改正では、上り列車が「南風」に統合された。
 これで、高知〜宿毛間下り3本、高知〜中村間下り2本の設定となり、下り列車のみで上り列車が存在しないという珍特急列車となった。



あしずり9号
土讃線 高知駅
2003年8月10日


 2003年10月1日改正では、「南風」の中村・宿毛直通が大幅に増えて、下り4本が「南風」化されたため、高知〜中村間に下り1本のみの運転となったが、列車名には「1号」が付加されていた。


 2006年3月18日改正では、ついに列車名から「1号」が消えて、単に「あしずり」となった。



<下り>あしずり
土讃線 安和駅
2008年5月17日


 2009年3月14日改正で、「南風」上り1本が須崎始発に変更されたため、その車両回送を兼ねて高知〜須崎間に下り1本が「51号」として増発された。この列車は、列車番号が「9071D」と、毎日運転の臨時列車的扱いとなっている。
 この関係で、高知〜中村間の下り列車が、再び「1号」を名乗っている。


 2010年3月13日改正では、再び高知〜中村間下り1本のみの運転となった。


 2011年3月12日改正では、「南風10号」の中村〜高知間を系統分割したうえで、そのまま1時間繰り上げる形で上り列車が増発された。
 また、列車番号9000番台を名乗る「毎日運転の定期列車」が、朝の下り始発(中村行)と夜の上り最終(宿毛始発)の1往復増発され。
 結果、高知〜中村間に下り2本/上り1本、高知〜宿毛間に上り1本の、合わせて2往復体制となった。
 なお、列車号数一の位は全て通番となっていることから、「51号」「2号」「3号」54号」が存在することとなった。


 2012年3月17日改正では、「南風」2往復と「しまんと」1往復を高知で系統分割して、高知以西の区間を全て「あしずり」としたため、3往復の純増となった。
 このほか、深夜の上り最終列車が廃止されて、代わりに早朝の窪川始発の上り列車が新たに設定された。
 結果、運転本数は5往復に増発となり、高知〜窪川間上り1本、高知〜中村間3往復、高知〜宿毛間下り2本/上り1本という体制となった。
 このうち、宿毛発着の全列車と、高知〜中村間の上り1本のみがグリーン車付きとなっているほか、このうちの下り1本は、「あしずり」として初めてのアンパンマン列車となっている。


 2014年3月15日改正では、朝の50号台1往復が廃止されたほか、下り1本の「しまんと」への系統統合、および一部「南風」の系統分割があって、スジの立て替えが行われた。
 結果、高知〜中村間下り6本/上り5本、高知〜宿毛間上り1本の、合わせて6往復体制となった。
 グリーン車付きの列車は宿毛発着の1本を含む3往復で、そのうち下り最終の中村行きがアンパンマン列車となっている。


川奥信号場を通過する「あしずり」

あしずり5号
TKT中村線/予土線 川奥信号場
2018年10月24日


 2019年3月16日改正では、「南風」の系統分割によって高知〜中村間と高知〜宿毛間に各1往復ずつが増えたが、上り最終の高知〜宿毛間列車が「しまんと」に系統統合された。
 結果、高知〜中村間下り7本/上り6本、高知〜宿毛間1往復の、合わせて下り8本/上り7本の運転となった。
 グリーン車付きの列車は宿毛始発の上り1本を含めて下り4本/上り3本で、そのうち下り3本/上り2本(内1本宿毛始発)がアンパンマン列車となっている。


 2019年9月3日から27日までの平日に、また同28日からは毎日定期運用として「あしずり8/9号」の1往復に新型2700系気動車が充当開始された。
 当該列車は従来グリーン車付きの編成であったが、2700系はモノクラスで運用されることから、「あしずり」でグリーン車の連結される列車はアンパンマン列車のみとなった。



あしずり9号
土讃線 高知駅
2019年9月29日



あしずり1号
土讃線 佐川駅
2019年9月29日


 2020年3月14日改正では、「南風」上り1本が高知で系統分割されて中村〜高知間列車が「あしずり」化された。
 結果、高知〜中村間7往復、高知〜宿毛間1往復の、合わせて8往復の運転となった。

 これに伴い、下り最終の15号がアンパンマン車両から通常車両に変更(グリーン車は連結)されてグリーン車付きの列車は3往復(内宿毛始発がの上り1本)となり、その内の2往復(宿毛始発の上り1本を含む)がアンパンマン編成となった。


 2020年7月18日、2700系の増備車投入に伴って「南風」「しまんと」の使用車種に変化が生じたことにともない、1往復が2000系から2700系に車種変更されたほか、緑アンパンマン列車が同日限りで運用終了となった。
 これにより8往復の全体本数はそのままに、高知〜中村間に2700系が下り2本/上り1本、2000系モノクラスが下り5本上り6本、高知〜宿毛間に2700系下り1本と2000系上り1本のいずれもモノクラス編成という体制となり、グリーン車連結列車が消滅した。



あしずり5号
土讃線 佐川駅
2020年5月13日


 2021年3月13日改正では、基本ダイヤはそのままで追加投入された2700系の運用が拡大された。
 1往復を除いて全てモノクラス編成で高知〜中村間7往復と高知〜宿毛間1往復の、合わせて8往復はそのままで、高知〜中村間の下り2本と上り3本と高知〜宿毛間の下り1本が2700系となり、この内高知〜中村間の1往復がグリーン車を連結している。
 なお、2000系は全て量産車のみの運用となった。


 2022年3月12日改正では、上り最終の「しまんと」が高知で系統分割されて、高知以西の区間が「あしずり」に編入される形で上り1本が増発された。
 結果、高知〜中村間7往復と高知〜宿毛間下り1本/上り2本の、合わせて8.5往復の運転となった。
 このうち高知〜中村間の下り3本と上り4本、高知〜宿毛間の1往復が2700系となり、そのうち高知〜中村間の1往復がグリーン車を連結。

 同年のお盆の多客輸送では、「南風」全列車の5両編成化と「うずしお」増結のために2700系が総動員されたことから、通常2700系で運転される全ての列車が2000系での代走となった。
 なお高知配置の車両だけでは不足するため、松山運転所から4両の2000系(内3両はN2000系)を借り受けてて対処している。


土佐くろしお鉄道車を使用した「あしずり」

あしずり12号
土讃線 須崎駅
2022年10月5日


 2023年3月18日改正では、特に変更はない。


2700系の並び

あしずり8号(左)/あしずり3号(右)
土讃線 須崎駅
2023年5月11日


 2024年3月16日改正では、1往復が廃止されたほか、上り1本が「しまんと」に統合された。
 その結果、高知〜中村間6往復と高知〜宿毛間1往復の、合わせて7往復の運転となった。
 このうち高知〜中村間の2往復と高知〜宿毛間の1往復が2700系となり、またその内の高知〜中村間1往復がグリーン車を連結する。



<私見>

 四国の特急列車の例に漏れず、停車駅がやや多すぎる。利用客増のために停車駅を増やしたい気持ちも解らないでもないが、その為に長距離直通客に不便を強いるようでは駄目ではないか?
 そのうえ、土讃線の高知以西は高速化が立ち後れており、一線スルー化されている駅が西佐川しかない。

 そのため、高性能な2000系&2700系気動車を使用しながら、表定速度が60キロ台と非常に遅く、せっかくの高性能気動車が勿体ない。

 また、スピードもさることながら、今後の高知自動車道の延伸を考えると、現状では本数が少なすぎで、せめて「南風」「しまんと」と合わせて、高知〜中村間で1時間間隔の高速特急列車網を構築するべきでありこれも今後の課題としたいが、いかんせん高知県南西部は人そのものがいない、というのが最大の問題ではある。





検索サイトから直接来られた方は、ここをクリックしてTopに移動できます