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予讃線・小松松山バイパス ルートおよび電化方式等選定の経緯


<ルート選定> 2002〜2003年

 ルートの選定にあたっては、全国新幹線鉄道整備法に基づく、整備新幹線の基本計画線のルートを基本として、以下の3案を検討した。


(1)基本計画線のルートそのままに、伊予西条より新線を建設。新線の松山駅ホームは、在来の松山駅ホームと斜めに交差する。
(2)基本計画線のルートをベースに、伊予小松から新線を分岐し、北側より在来松山駅のホームに接続する。
(3)基本計画線のルートを放棄し、伊予小松から分岐して横河原に抜け、松山市の市街地を抜けて松山駅に至る。


(1)のルートは将来の新幹線への転用、ならびに大分方面への延長を考慮したものである。
 曲線半径は最急4000m、最大勾配も12パーミルに抑えられている。

 新線として建設する区間が長いので運転速度をを高くすることができる反面、在来松山駅ホームとの面的接続が無くなるため、新線経由の列車は全て松山駅で折り返すか、または在来の予讃線・伊予市方面に接続する路線も併せて建設する必要があり、また市街地を横切ることから建設費や騒音等の問題が懸念される。


(3)のルートは、横河原〜松山間の都市圏輸送を考慮したものである。
 曲線半径は最急800m程度、最大勾配は18〜20パーミル程度となる。

 トンネル区間が短いことから建設費が抑制でき、また都市圏輸送についてもある程度の需要が見込める反面、距離が長くなるうえに線形が悪くて高速運転という点で若干不利で、また松山駅への接続についても南側から取り付く線形となることから、宇和島方面への直通の際はスイッチバック運転となるなどの、運転上の不都合が発生する。
 貨物列車をこのルートに運転する場合は、市坪の貨物ターミナルへの短絡線の建設または松山駅でのスイッチバック等が必要となり、コストおよび手間が増大する。

 またこのルートの場合、伊予小松から横河原までの間に大断層地帯である中央構造線をトンネルで横切る必要があり、難工事が予想される点からも、当初から積極的に採用する理由は皆無であった。


(2)は当初からの有力案であり、(1)よりも建設費を抑制するため、伊予小松から分岐して松山市の北側に取り付き、市街地部分は国道196号線の直上を通ることで沿線に対する騒音対策も兼ねることができる。
 曲線半径は最急2500m程度、最大勾配は12パーミルである。

 将来の新幹線への転用を考慮した場合、松山側の2500mの曲線が本則250km/h程度に制限されるが、曲線開始地点が松山駅の手前約7kmの地点であり、実質的にほとんど問題とならないこと、また新幹線ホーム建設の際も在来線ホームの直上に建て増す形となることから、建設費の抑制も期待できる。
 さらに、在来の貨物線への接続も容易であることから、貨物列車を当ルート経由とすることで貨物輸送時間の短縮を図ることも可能となる。

 また、このルートの場合はトンネル区間が全て単一の地層帯に属し、途中に目立った断層も皆無であることから、トンネル工事が順調に進むこと、また完成後のトンネルの保守費等も低減できることが期待できた。


 これらの点を考慮して、現行ルートである(2)案が採用となった。



<電化方式等の選定> 2004年

 電化方式等については、上記のルートが確定した後に、以下の5案を比較検討した。


(1)交流20000ボルト、標準軌、運転最高速度250km/h以上、伊予西条〜松山間最速12分
(2)直流3000ボルト、三線軌条、運転最高速度200km/h、伊予西条〜松山間最速16分
(3)直流3000ボルト、狭軌、運転最高速度200km/h、伊予西条〜松山間最速16分
(4)直流1500ボルト、三線軌条、運転最高速度200km/h、伊予西条〜松山間最速16分
(5)直流1500ボルト、狭軌、運転最高速度160km/h、伊予西条〜松山間最速20分


 (1)(2)(4)については軌間可変車両の導入が前提となる案であり、途中での軌間変換に時間がかかることが難点であった。

 特に(1)については貨物列車や普通列車のみならず、特急列車についても在来の車両が入線できず、専用の交直両用の軌間可変車両のみが走行可能であり、費用対効果を考慮のうえで早々に廃案となった。

 (2)(4)については三線軌条化することで在来車両の入線自体はできるが、検討当時の技術では軌間変換に1箇所1両あたり1分を要し、当時最大9両編成運転であった「しおかぜ」の場合は、1編成の軌間変換に9分もかかり、200km/h運転による時間短縮分以上の時間的ロスが生じるばかりでなく、当時の技術では振子+軌間可変の両立が不可能(近い将来の実用化の見通しも全く無かった)であり、在来線区間での所要時間ロスや、三線化による工事費および車両新製費ならびに保守費用等の増大を加味すると、軌間可変車両の導入自体が大きなマイナスであった。


 以上の点から最終的に(3)と(5)に集約され、この2案を比較することとなった。


 (5)案については、検討時点で既に北越急行・ほくほく線における681系特急「はくたか」、およびJRT四国・瀬戸大橋線陸上部における「しおかぜ」「南風」速達列車での実績があった方式であり、既存の在来車両(18000系等)でも実現可能な速度であり、技術的な問題点等は全く無かった。

 (3)案については、(4)案の検討に際して当時諸外国の例を探しても直流1500ボルトで200km/h運転を行っている例は無く、集電性能に対する懸念があったことから、電圧を3000ボルトに昇圧して対応することとしたものである。
 電圧そのものに関しては、VVVFインバータの制御プログラムでの設定の他、電気回路を3000ボルト対応の物にすることで対処可能と考えられ、既存車両についても小規模な改造で対応が可能と判断され、さほど問題はないと思われる。

 一方、狭軌で200km/hの営業運転というのもまた、諸外国をはじめとしてどこにも前例が無いものとなっており、安全安定的な輸送を担保するに当たっては、慎重に検討する必要があったが、線路完成後開業までの間に試験運転を行うには時間的猶予があまり無く、またそのようなリスクに対する時間短縮効果は160km/h運転比で最大わずか4分程度であり、停車時間や余裕時分、接続時間の調整等で吸収可能であると判断された。


 以上の点に加えて、航空機等に対する競争力向上のためのスピードアップは喫緊の課題であることから、短期間かつ低コストかつ低リスクで最大限の効果を期待できる(5)案の採用が決定した。



 工事は2005年度より開始し、将来の新幹線への転用を視野に入れて線路設備等は新幹線規格で建設することとした。
 また先進導坑掘削工事中の段階で、青函トンネル区間における新幹線と貨物列車のすれ違い時の風圧が問題として発覚したことから、貨物列車も走行する予定となっていた当区間のトンネル区間については、複線間隔を通常の新幹線区間よりもさらに0.2m広げる措置を執った。