JR四国の車両の製造銘板



 鉄道車両には基本的に、発注者と製造者を示す銘板が車体外板に取り付けられている。

 楕円形または長方形の金属プレートに事業者名が表記され、製造者の銘板には製造年も併記される。
 一般的には第2エンド側の妻面に表記されているが、一部側面端部に表記されている車両も存在する(1000形等)。

 かつては、更新修繕などの大規模な改造を行った場合にも、製造者の銘板とは別に改造者(工場)の銘板と改造年が併記された銘板が追加で取り付けられていたが、近年は車体外板には取り付けないことが多いようだ(車内には取り付けられている)。


 ここでは、JR四国在籍車両のそういった銘板について記述する。


〜新車の場合〜


 まず前提条件として、国鉄分割民営化に際してはJRグループ各社は社名の「鉄」の字に常用漢字の「金失」ではなく「金矢」を使うところが続出した。
 登記簿上の表記は「金失」のままで、「金失」が「金を失う」に繋がるということから、それを嫌って通常は「金矢」を使用することとしたものである。
 しかし、JRグループの中でもJR四国だけは、(そんな細かいことは気にせずに?(笑))通常の「金失」を使用し続けている。

 以上の予備知識があると、四国の車両の銘板を見るとより面白くなる。

 以下、新車の銘板について登場時の時系列順に列挙する。
 なお、下記以外の121系及びそれ以前の車両については、全て日本国有鉄道銘板となっているので割愛する。



キハ185系気動車(1986〜88年製造)

 1986年に38両が新製投入された後、民営化後もさらに14両が増備された。
 製造メーカーは、日本車輌、新潟鉄工、富士重工の3社に及び、製造年は全て元号表記。

 発注者銘板の鉄の字は「金矢」である。以降しばらくの間、正式社名ではないこの文字が銘板に使われ続ける。

キハ185−14
(国鉄発注車両)
キハ185−18
(国鉄発注車両)
キハ185−1015
(JR四国発注車両)
キハ185−13
(国鉄発注車両)

 国鉄発注車であるが、現在はJR四国の銘板が取り付けられている。恐らく普通列車仕様の3000番台車に改造されたときに付け替えられ、0番台車に再改造された際もそのままになっているものと思われる。

キハ32/54形気動車(1987年製造)

 両車とも、製造者は新潟鉄工と富士重工の2社。
 製造年は全て元号表記。

 発注者銘板は、キハ32形は21両全車が「日本国有鉄道」銘板となっている。

 キハ54形は全12両の内、日本国有鉄道銘板が2両、四国旅客鉄道銘板が5両で、発注者銘板の無いものが5両となっているが、四国旅客鉄道の銘板は全て「金矢」表記となっている。
 なお発注者銘板の無い車両でも、銘板を止めるネジ穴が存在することから、当初はあったが後年外された可能性が高い。
キハ32−3
キハ32−17
キハ32−18
キハ54−3

新潟鉄工製
キハ54−7

富士重工製は工場名も併記
キハ54形の銘板のバラエティ
(全6種類)

2000系気動車(1989〜98年製造)

 1989年に試作車、1990年に量産車、1995年に改良型先行量産車、1997年に改良型量産車がそれぞれ登場。
 80両(土佐くろしお鉄道車を含む)全車富士重工製で、製造年が元号表記。製作事業所の「宇都宮」も併記しているのが特徴。

 発注者銘板は全て「金矢」表記となる。


 ちなみに、土佐くろしお鉄道の発注者銘板は長方形の青いプレートになっている。

試作車2001形

平成”1”年となっている点に注目
量産車2006形
(平成2年製造)
量産車2008形
(平成3年製造)
量産車2213形
(平成2年製造)
改良型先行車2458形
(平成7年製造)
改良型量産車2461形
(平成10年製造)
量産車2230形

1000形気動車(1990〜97年製造)

 1000形は1990年から5次に渡って総勢56両が製作されたが、全車が新潟鉄工製で、製造年は元号表記。
 発注者銘板は全て「金矢」表記となっている。
1013形
(平成2年製造)
1017形
(平成2年製造)

8000系電車(1992〜97年製造)

 1992年に先行量産車3両が登場。その後、量産車が1993年に41両と1997年に4両、それぞれ増備されている。

 製造者は日本車輌と日立製作所で、製造年は日本車輌が西暦、日立は元号となっている。
 ただし、先行試作車の3両は日本車両製の元号表記となっている。

 発注者銘板の鉄の字はすべて「金矢」表記となっている。

L1編成8001形
(平成4年 日車製造)
L1編成8107形
(1993年 日車製造)
L2編成8152形
(1993年 日車製造)
L5編成8405形
(平成5年 日立製造)
L6編成8406形
(平成5年 日立製造)
S1編成8501形
(1993年 日車製造)
S4編成8306形
(平成5年 日立製造)
S6編成8506形
(1997年 日車製造)
S6編成8206形
(1997年 日車製造)

6000系電車(1996年製造)

 老朽化した111系置き換え用として、1996年に3両編成2本が日本車輌で製作された。
 製造年は西暦表記、発注者銘板は「金矢」表記となる。
6002形

5000系電車(2003年製造)

 JR西日本223系をベースにした5000形と5200形は川崎重工製、ダブルデッカーの5100形が東急車輌製となり、いずれも2003年製造であるが、川崎重工が西暦表示、東急車輌が元号表記と異なっている。

 いずれのメーカー製も、発注者銘板の鉄の字はJR四国の電車としては初めて正式社名の「金失」になっている。

5101形
5201形

1500形気動車(2006〜14年製造)

 2006年登場の1500形は2014年まで8次に渡って製造された。
 2012年製の第7次車(1566/67)の2両のみ近畿車輛製で、その他は全て新潟トランシス製。

 JR四国の気動車として初めて、製造年が西暦表示となったほか、発注者銘板が正式社名の「金失」表記となった。
1501形
(第1次車)
(2006年製造)

 新製回着時の物で、検査標記も新潟トランシスになっている。
1505形
(第1次車)
(2006年製造)
1551形
(第3次車)
(2009年製造)

第3次車はこの1551形1両のみ
1553形
(第4次車)
(2010年製造)
1566形
(第7次車)
(2013年製造)

8600系電車(2014〜18年製造)

 2014年に付属2両編成2本、2015年に基本3両編成と付属2両編成各2本、さらに2018年に基本3両編成1本がそれぞれ製作された。
 全て川崎重工製で、製造年は西暦となっている。
 発注者銘板の鉄の字はもちろん、「金失」表記。
E1編成8701形
(2015年製造)



2700系気動車(2019年〜 製造)

 2000系後継として量産の続く2700系。
 全て川崎重工製西暦表示。発注者銘板ももちろん「金失」表記。


 土佐くろしお鉄道所有車も銘板が異なるだけで他は同じであるが、よく見ると四角いくろしお鉄道のプレートの下に、楕円形の銘板を取り付ける台座のような物が見える。
 金型は当然ながらJR四国車の物をそのまま使用したのであろうが、その金型にもともと取付台座が付いていたのであろうか? それとも誤ってJR四国銘板を取り付けてしまったのを外した痕なのか?

2753形
(2次車)
(2019年製造)
2780形
土佐くろしお鉄道所有車
(2020年製造)



 上記のように、JR四国の場合は本来ならば「金失」表記になるはずが、JR発足から相当期間、他のJR各社と同じ「金矢」表記となってしまっている。

 電車の場合は2003年登場の5000系から、気動車の場合は2006年登場の1500形から、正しい「金失」表記になっている。

 なお1990〜93年に製造された7000系電車については、何故か車体外板にこの手の銘板が全く取り付けられておらず、かなり珍しいレアケースといえよう。



 製造者銘板の製造年表記が、メーカーによって、また同じメーカーでも製造時期によって異なっているのも面白い。
 なお、国内に現存するメーカーでは現時点で製造年に元号を使用しているメーカーは無いため、製造者銘板の「令和」表記の実現は難しそうである。






〜改造車の場合〜


 改造車両の場合、かつては既に述べたように製造者銘板はそのままで改造者の銘板を追加していくのが国鉄時代のスタイルであったが、少なくともJR四国においては車体外板には改造事業者(工場)の銘板の追加は行われていない。

 なお、オロ50系「アイランドエクスプレス四国」は国鉄時代の改造であることから、ここでは除外する。



キロ185形気動車・アイランドエクスプレス四国U(1999年改造)

 国鉄末期に改造されたオロ50系「アイランドエクスプレス四国」の老朽化のため、その置き換えを目的に改造された。
 4両編成で登場したが、運転台付きの前後の2両(キハ185−11/12)は車体端部のラッピング程度にとどまり、実質的な改造車両は中間のキロ186形2両のみであった。

 製造者銘板および発注者銘板とも改造種車の物をそのまま使用しているが、車体への取付方が両車で異なっているのが面白い。
キロ186−4
(元キロハ186−4)
(現キロ186−1002)
キロ186−8
(元キロハ186−8)

113系電車(2000〜01年改造)

 当時在籍していた111系置き換え用として、JR東日本から購入した113系を大改造。
 先頭車は新たに「クハ112/113」を新形式として起こしたほど。

 製造者銘板は種車の物をそのまま使用し、発注者銘板を「日本国有鉄道」から「四国旅客鉄道」に差し替えている。外板には改造車銘板の追加は無いが、車内に多度津工場改造のプレートが設置されていた。
 鉄の字は、外板の銘板は「金矢」だが、車内の改造者銘板は「金失」になっている。
クハ112−2
(元クハ111−529)
クハ113−2
(元クハ111−223)
モハ113−2
(元モハ113−270)
車内の改造者銘板

1200形気動車(2006〜08年改造)

 1000形からの改造。
 外板の銘板は種車の1000形のをそのまま使用し、特に手を加えていない模様。
1247形
(元1047形)
(平成4年製造)
1250形
(元1050形)
(平成7年製造)
1254形
(元1054形)
(平成9年製造)

7200系電車(2016〜19年改造)

 国鉄末期に製造された121系電車の魔改造によって、2016年から2019年にかけて2両編成×19本が登場。
 妻面の銘板は、製造者銘板は改造種車の物そのままで、発注者銘板を「日本国有鉄道」から「四国旅客鉄道」に交換している。発注者銘板の鉄の字は「金失」になる。
 製造者は、日立製作所(1,12,13,14)、近畿車輛(2,5,6,7,18,19)、川崎重工(3,4,15,16,17)、東急車輌(8,9,10,11)の4社に及び、製造年は全て元号表記となっている。

 他の改造車と同様、改造者銘板は外板に追加されずに車内後位側にのみプレートが取り付けられており、鉄の字は「金失」表記となる。
R07編成7207形
R10編成7310形
R03編成7303形
R06編成7306形
R14編成7314形

 何故か室内の製造者銘板が撤去されている(取付穴のみが残っているのが判る)。
 ちなみに、日立製作所製である。
R10編成7310形

 逆に、製造銘板はそのままで改造銘板が取り付けられていないパターン。
 同様に取付穴はあるので、撮影時点でたまたま取り外していただけかもしれない。

キロ185系気動車「千年ものがたり」(2016年改造)

 キハ185系の改造で、改造種車は3両全て1986年製造のキハ185系第1次車だが、1号車が富士重工製、2号車が新潟鉄鋼製、3号車が日本車輌製と3両それぞれ製造者が異なっているのが面白い。
 妻面の銘板は製造者銘板はそのままで、発注者銘板が「日本国有鉄道」から「四国旅客鉄道」の物に交換されている。
 もちろん、正式社名の「金失」表記である。

 小生は未確認であるが、車内には「多度津工場改造」のプレートが取り付けられていると思われる。
キロ185−1003

種車はキハ185−3102
(元のキハ185−1002)



 改造車両の場合は、種車が自社発注車の場合は銘板をそのまま継続使用し、国鉄等他社発注者の場合は自社銘板に交換しているようであるが、改造内容の大小によっては交換していないケースもある(「アイランド2」等)。

 交換しているケースを見ると、1999〜2001年改造の113系では「金矢」表記で、2016年改造の7200系やキロ185形では「金失」表記になっており、新製車の銘板表記が変更された2003年を境に変わっており、辻褄が合う。







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