キハ32形 一般形気動車


土讃線 阿波川口駅
2008年4月6日



 キハ54形と同じ目的のもと、1987年3月に投入された軽快形気動車で、主にローカル線での小単位の輸送にあたる。

 全長は15.8mと短く、エンジンはキハ185系やキハ54形と同じDMF13HS形を1基搭載(250ps)し、廃車発生品の液体変速機を搭載している点も同様である。
 製造コスト削減のため、廃車発生品の制御機器等を流用したりバス用の部品を使用している他、ロングシートを採用している点はキハ54形と同じであるが、車体は通常の鋼製となっている。


 21両が製造され、1〜11号車が新潟鉄工(現新潟トランシス)製、12〜21号車が富士重工製となっている。

 車重が軽いため、加速性能はそこそこだが、急勾配区間ではパワー不足と粘着力不足を露呈してしまう。


キハ32形登場時のカラーバリエーション
高知地区は赤

土讃本線 窪川駅
1987年4月
徳島地区は藍

高徳本線 徳島駅
1987年4月
松山地区はオレンジ

予讃本線 松山駅
1987年4月

 丸目ライトが特徴の新潟鐵工製



運転台

・・・バーが邪魔だなw
何故こんな写真しか撮ってない?w
客室
上写真はいずれも1987年4月8日撮影で、現在はかなりくたびれてきているw

シートの下に設置されているバス用ヒーター

メーカーは、デンソー



 登場当初は、投入地域によってカラーが異なっていたが、1988〜89年頃から、順次コーポレートカラーであるスカイブルーを使った現在の塗装に変更された。
 また、投入時はワンマン機器は搭載していなかった(準備工事のみ)が、1988年4月改正に合わせて対応改造が行われ、該当車両には車外取付のバックミラーが装備されたが、後年駅ホームのミラーが整備されるに伴って撤去されている。

 なお運転席側の方向幕は、登場当初は列車種別を表示していたが、1998年の秋から遅くとも年末までの間にかけて全て行先表示に変更され、これに合わせて側面のサボの使用を停止している。



 なおこの車両、製造メーカーによって顔つきなどが異なっている点が面白い。

 ライトケースが丸形独立となっているのが新潟鉄工所製
 四角いライトケースが付いているのが富士重工製


 新潟鉄工製と富士重工製では、このほかにも随所に差異があり、ざっと見て判るだけでも、以下のような違いがある。


上:新潟鉄工製/下:富士重工製

<形状やサイズが異なるもの>

・ヘッドライト&後部標識灯ケース
・側面客室窓
・正面貫通路上雨樋
・側面梯子(屋根上に上がるための物)
・出入口ドア下のステップ
・排気管(の断面形状および排出口:新潟車は円形・直上、富士重車は長方形・斜め外方延長パーツ有り)


<取付の有無自体が異なるもの>

・正面貫通路上のフック(富士重車のみ有り、新潟車は無し)
・正面貫通路脇の小フックの数(富士重車2対、新潟車1対)


<取付位置が異なるもの>

・運転席側上部方向幕
・ワンマン表示札挿し
・車端コーナー部分の雨樋
・所属区所名札挿し
・給水口
・製造銘板&所有者銘板
・標識灯掛け
・出入口横外部スピーカー
・出入口脇の通風スリット
・ドアコックの位置(▼マークの場所)
・手歯止めの収納位置
・屋根上ベンチレータ(換気扇)
・屋根上信号煙管


屋根上
左:新潟鉄工製/右:富士重工製
排気管
左:新潟鉄工製/右:富士重工製

 このほかにも、車体四角の「面取り」の処理も両社で異なっている。

 左画像の左側9号車が新潟鉄鋼製、右側15号車が富士重工製である。


 さらに、2014年頃に設置された野生動物等巻き込み防止のパイプガードも、新潟車と富士重車では構造が異なる(下記参照)。

 これら外観上の違い以外に、室内出入台デッキのステップ部分も造形が異なっている。


 なお、富士重工車のヘッドライトは一見角形だが、実は丸形ライトに角形のケース(枠)を被せているだけである
 ほぼ同時期に登場した同じ富士重工製の他の車両でも、同様の物が多数見受けられる。



鳴門線 鳴門駅
1987年4月8日

 鳴門線ローカル列車に連結されたキハ32形(一番奥)。

土讃線 高知駅
1993年2月14日

 3両以上の編成では増結車両的な使われ方が多かった。
 キハ58系3連に32を連結した土讃線ローカル。

 列車無線の搭載は1994年度で、この時は未搭載。

多度津工場線
2003年10月19日

 2003年多度津工場公開時に、多度津駅〜工場間のシャトル列車に使用された、キハ32−14。

予讃線 松山駅
2005年6月13日

 松山駅で並ぶ、キハ32を連結した予讃線ローカル。

土讃線 塩入駅
2006年11月4日

 珍客・キヤ191との顔合わせ。

土讃線 讃岐財田駅
2007年3月10日

 「JR発足20周年記念」のヘッドマークを掲げた、土讃線ローカル列車。

土讃線 小村神社前
2008年3月1日

 3月改正での開業を目前に控えた小村神社前を通過する、キハ32ローカル。

土讃線 高知駅
2008年8月10日

 高知よさこい祭りの日に運転された、オール32形3連の普通列車。

予讃線 八幡浜駅
2008年4月12日

 予讃線松山以南では、キハ54とともに主力を張るキハ32。
 八幡浜駅で僚友のキハ54と並ぶ。

土讃線 高知駅
2020年5月13日

 2020年になって、テールランプがクリアーレンズとなっている車両の存在が確認されている。
 高知運転所所属の17号車が該当するが、現時点ではこの1両のみであろうか?。

土讃線 讃岐財田駅
2020年8月24日

 ピカピカの綺麗な姿で所属の高知運転所へ向かう、全検出場試運転のキハ32−18。


 キハ54形に続いて2014年頃に設置されたパイプガードであるが、新潟鉄工製の車両と富士重工製の車両では、構造が異なっている。


新潟車(キハ32−5)

予讃線 松山駅
2020年5月14日
富士重車(キハ32−20)

土讃線 塩入駅
2021年3月16日


(3枚とも)
予讃線 豊浜駅
2022年5月10日撮影


 2022年4月29日に、キハ32−7が予土線運行中に倒木に衝突する事故が発生した。
 上画像は、多度津工場への修理入場試運転の模様で、運転席側窓ガラスが粉砕し、窓枠部分の車体が凹み、ワイパーも曲がっているのが確認される。




バリエーション
(登場順に記載)


 キハ32−4の改造による、海洋堂ホビートレイン・かっぱうようよ号。

 元々は2011年7月の登場で、車内に海洋堂のフィギュアを展示したショーケースが設置される等していた。

 2013年と2016年にリニューアルが行われ、現在のカッパ塗装は3代目に当たる。


 なお、この車両は2022年8月25日に予土線での営業運転中に落石と衝突して脱線するトラブルに見舞われており、左画像は修理完了して松山運転所へむけて出場試運転されていくシーンである。

予讃線 詫間駅&詫間〜みの間
2014年3月11日

 キハ32−3の改造により2014年3月登場した、0系新幹線もどき「鉄道ホビートレイン」。

 前位側に0系に似た前頭カバーが設置されており、此方は連結器がそのカバーに隠れていることから、他の車両と連結が出来ない。
 後位側にはやや大型の排障器が追加されている。


 車内はショーケースが設置されて鉄道模型が展示されているほか、実物の0系新幹線の転換式腰掛が2脚設置されている。

予讃線 伊予市駅
2023年5月13日

 2021年7月4日から、キハ32−5を改装した「鬼列車」が営業運転を開始した。

 予土線沿線にある愛媛県鬼北町が、全国で唯一「鬼」の文字が入った自治体で、「鬼のまちづくり」をコンセプトに町おこしを進めるのに協賛する形で登場。

 2年間の期間限定での運行予定となっていたが、2024年9月時点でもまだこの姿で運行中の模様である。


(2枚とも)
予讃線 海岸寺〜詫間間
2022年6月9日

※このカラーは現存しない


 ホビートレイン・ウルトラマンバージョンに改装された、キハ32−2。

 「海洋堂ウルトラマンフィギュア展」開催に伴い、2021年7月22日から営業運転を開始。

 コレは上記展開催に伴う期間限定であり、2022年6月9日に多度津工場に入場して、元の塗装に復帰している。




<その後の運用等>

 落成当初は、1〜7号車が松山、8〜15号車が徳島、16〜21号車が高知に配置され、予讃線・多度津〜観音寺間を除いた四国内の全線で運用された。

 1988年4月改正時点でも、定期運用が無いのは高松〜観音寺間だけであったが、やは小型車体故の収容力の低さから徳島地区では敬遠され、その後は1990年3月までに15〜21号車(高知配置)を除いた全車が松山に集められた。

 その後は、車両運用の変更等に伴って、高知と松山との間で数両単位での小規模な異動が時折発生する程度で、特に大きな動きは見られなかった。
 予讃線の伊予市までの電化が完成した1993年3月改正時点では、定期運用区間は予讃線の松山以南と予土線、および土讃線のみとなり、この体制が長く続くことになる。

 2011年3月改正で土讃線の猪ノ鼻峠を越える定期運用が無くなり香川県内での定期運用が終了したほか、阿波池田〜土佐山田間でも朝と夕方のみの運用となった。


 2014年3月末現在、松山に新潟車を中心に11両(1〜11)、高知には富士重工車ばかり10両(12〜21)の配置となっている。


 2015年3月改正で12が、2016年3月改正で13〜15が、高知から松山へ異動した可能性が濃厚。
 運用範囲は、松山所在籍車が予土線と予讃線・松山以南でキハ54形と共に主力として活躍しているほか、予土線はキハ32&54の独壇場となっている。
 但し、33パーミル勾配が続く予讃線・八幡浜〜宇和島間については、予土線への車両送り込みを目的とした 623D/4668D の1往復のみ(キハ54形と併結)となっている。
 高知所在籍車は少数派で、土讃線の阿波池田〜須崎間で朝夕を中心に見ることが出来る。


 2019年3月改正時点では、高知に16〜21の6両配置、それ以外の15両は全て松山の配置となっている。
 高知配置車は土佐山田〜須崎間で朝から昼までの間2両編成で3往復に使用され、午後以降は運用が無い。
 対して松山配置車はキハ54形と共に予讃線松山以南と予土線で主力として運用されている。


 2024年3月16日改正時点では、高知に15/16/18〜20の全て富士重車で5両配置、それ以外の16両が松山配置となっている。
 運用については概ね上記の通りで変更はない。


 2024年9月17日に松山配置の21号車が多度津へ向けて廃車回送され、残存数は20両となった。


 
 2025年3月15日改正では、高知地区での定期運用が終了したほか、松山地区でも大幅に運用が縮小された。
 これを受けて、4月9日に松山から5両(1/9/11/12/17)、4月11日に高知5両(15/16/18/19/20)の、合わせて10両が多度津へ向けて廃車回送された。
 なお、このうちの15号車は高知から松山への転属となっている。

 これにより、松山運転所に11両(富士重車2両(13〜15)/新潟車8両(2〜8/10))を残すのみとなった。



<予讃線 キハ32形使用編成列車>
 (2021年3月13日改正時点:参考程度に)

 621D/625D(*)/627D/915D/653D/923D/925D/667D
 620D/912D/916D(*)/622D/624D

 編成列車は 912D/622D/667D が3両編成となる以外は2両。
 2両編成は基本的にキハ54とのペアだが、(*)の列車はキハ32形の2連。

 これ以外は全てワンマン単行列車となる。




形式
車体 新潟鐵工車
富士重工車
 丸形ライトケースと、黒い窓サッシが特徴の新潟鐵工車。
 貫通幌枠上部の雨樋は、Rの無いカクカク門形。
 銀縁眼鏡(笑)と、銀のアルミサッシが付く富士重工車。
 貫通路の雨樋にはRが付いている。
屋根上
 AU26の前後にグローブ形ベンチレータが各1個、列車無線アンテナと信号煙管は前後に各1個。
 排気管は第2エンド側。
 冷房装置は前位側に偏って搭載されている。
 富士重工車も機器配置は同じ。

 この位置で見ると、貫通幌上部の雨樋の形状の差異、さらにはベンチレータや信号煙管の位置まで違うのがよく判る。
製造元/製造両数 新潟鐵工所
11両
(1〜11)
富士重工
10両
(12〜21)
寸法

15,800 mm (車体全長)
16,300 mm (連結面間全長)

2,828 mm (最大幅)
2,700 mm (車体幅)

3,845 mm (最大高さ)
3,620 mm (屋根高さ)
台車中心間距離10,800 mm
重量
26.9 t
車体
普通鋼
機関形式
出力
DMF13HS
250PS/1,900rpm
変速機
TC2A 又は DF115A
(変速1段・直結1段手動変速)
最終減速比
2.976
燃料タンク300L×1
ブレーキ方式
機関ブレーキ付
DA1A
ブレーキ装置
踏面片押
台車形式
DT22G

TR51E
許容最高速度
95km/h
車体構造・客室
2扉ロングシート
乗車定員
106(座席:47)
ホビートレイン車(3号車)は定員98

※さらに詳細はスペック一覧表参照

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