<架空鉄道「JRT四国」のページ>


キハ187系 制御付振子式特急形気動車




 1982年、JRT初のオリジナル車として手がけた車両だが、そのあまりにも現実離れ(当時のレベルで見れば)したスペックと設計上の(大)問題からお蔵入りとなった車両。
 しかしながら、その設計思想はその後の383系や12000系に引き継がれており、その意味ではかなりエポックメイキングな車両ではあった。


 あの当時、私の空想世界の国鉄四国総局管内では、来たるべく高速道路時代と本四架橋時代に備えた四国内主要路線の基盤強化がほぼ最終段階にかかっており、予讃線の高松〜松山間と土讃線の多度津〜高知間は既に約8割(1982年末時点)の区間の複線化が完了していた。
 特に土讃線は厳しい線路条件の緩和のため、讃岐財田〜箸蔵間や角茂谷〜土佐山田間では新線を建設するほどの力の入れようであった(金の無駄遣いとも言う(笑))。
 このようにして高規格化された路線を生かすべく、高性能車両の開発が必要になったわけで、こうした背景で企画したのが、このキハ187系である。

 ちなみに当時の国鉄新系列気動車の系列は「183」まで登場しており、「185」を飛ばしたのは近い将来のキハ185系登場を予感していたためである。



 キハ187系は当時としては世界初の電子制御による振子機構を組み込んだ高性能特急形気動車で、381系とキハ181系の台車をミックス、ボルスターアンカーの構造を簡素化して心皿の無い車体直結式とし、振子制御のためのガスシリンダーを内蔵した制御付振子台車を履く。なお、振子装置はコロ式。

 エンジンはDML30HZ形 水平対向12気筒ターボエンジンを2基搭載して、1車あたり定格出力1,000PS/最大出力1,300PSという途方もない車両であった。液体変速機は電子制御による3段切替式で、ロックアップクラッチを内蔵する。

 ブレーキはキハ181系ベースのCLEだが、当時自動車でも採用車が出始めたばかりだったアンチロックを備え、基礎ブレーキ装置は車輪ディスクとなっていた。また、機関ブレーキと排気ブレーキも常時併用する。

 許容最高速は130km/hだが、設計最高速度は180km/hとされて、160km/hの連続高速走行に耐えうる仕様とした(はずだった)。



 普通車の客室は、シートピッチ940mmのリクライニングシート、客室窓は複層ガラスで、曇り止めと強度のアップを兼ねている。グリーン車はシートピッチ1,190mmのリクライニングシートで、窓ガラスは普通車と同様。
 客室ドアは光電管式の自動ドアで、妻面のドアはタッチオープン自動式となる。

 出入口扉はキハ181系を踏襲した幅72cmの2枚折戸で、当時の四国内のホーム高さを考慮して、振子式でありながらステップが残る。

 冷房装置は床下搭載で、冷気ダクトを車端に移し、屋上車端部に搭載した強制換気装置を経由して車内に送られるため、床下冷房車特有の客室内のダクトの出っ張りが無い。


 主幹制御器はキハ181系をベースとした横軸2ハンドル方式となる。


 当初はキハ187/キハ186/キロ186の3形式のみであったが、その後高運転台式非貫通制御車のキハ188形も追加された。
 キハ187/188形には発電用のDMF15HZが搭載され、自車を含めて最大5両に給電することが出来る。



 だが、よく考えれば、床下にDML30を2機搭載した上でさらに冷房装置や放熱器、燃料タンクといった主要機器を全て床下の収納するのは不可能である(苦笑)
 そもそも、DML30×2基を搭載しただけで床下はほぼ満杯で、たとえ放熱器や冷房装置を積むにしても屋上でなければならず、そうなると重心が高くなって振子車が成り立たなくなる可能性もある。
 そうでなくても、水平対向12気筒30リッターエンジンである。相当な熱が発生すると思われ、特に夏場はかなり苦しいことが容易に想像できる。

 それだけではない。当初は当然ながらキハ181系と同様の2軸駆動を考えていた。エンジンを2基搭載するので1車2エンジン2台車4軸駆動、、、要は全輪駆動車である(笑)
 だが、台車に振子機構を組み込む関係上、2軸駆動とするのはほぼ不可能である。しかし、1軸駆動とした場合は500PSのパワーが全てその1軸に集中するため、駆動系の耐久性に大きな問題が生じる恐れもある。

 これに加えて重量が重く(45〜48t)、騒音や燃費の問題もあり、結局このような車両は実現不可能ということで、幻の車両として消えた次第である。




 だがこの車両が後年のJRTの車両に与えた影響は小さくなく、キハ188形のデザインと台車、それに客室設備は4年後に登場した383系に流用され、冷気ダクトを車端部に移して客室への張り出しを無くすという設計思想は、その後のJRTの全ての床下冷房車(383系・8000系など)に引き継がれている。


 また、キハ187系の流れを汲む過剰高性能気動車として12000系が登場。パワーとトルクでは若干負けているが、5段変速機の採用と、平均40tと軽量化された車体、それに操舵台車を武器にキハ187系を上回る性能を発揮する。



 このキハ187系を使用した「南風」は一部区間で160km/h運転を行い、高松〜高知間を最速1時間45分、岡山〜高知間を最速1時間50分、そして岡山〜中村間を最速3時間10分で結ぶことを想定していた。

 ちなみに現在のJRT四国では、「しまんと」が高松〜高知間最速1時間43分(EC500系)、「南風」が岡山〜高知間最速1時間40分(EC500系)、岡山〜中村間最速2時間55分(DC500系)運転となっている。




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