「代走いしづち」


アンパンマン車両も代走運用に入ることがある

9015M いしづち15号
予讃線 讃岐塩屋〜多度津間
2021年2月20日



「代走いしづち」とは?
歴  史
「臨時しおかぜ」
「代走しまんと」



<「代走いしづち」とは?>


 2021年現在、予讃線の特急「しおかぜ」「いしづち」は両列車とも日中毎時1本が運転され、宇多津または多度津で分割併合を行っているが、お盆や年末年始・ゴールデンウィークなどの多客期になると、新幹線に接続する岡山発着の「しおかぜ」を優先させるため、本来「いしづち」として高松発着となる編成を「しおかぜ」に振り替えて対応している。

 結果、編成全車両が岡山発着の「しおかぜ」になるため、高松方面の旅客の利便性確保のために、高松〜宇多津・多度津間に区間運転の「いしづち」を運転して、「しおかぜ」に接続させている。

 多くのファンはこれを「代走いしづち」と呼んでいる模様で、私も普段はそう呼んでいるが、たまに省略して「いし代(イシダイ)」と呼ぶこともある。
 2021年時点では基本的に8000系と8600系が使用されている。


 なお「代走いしづち」上記繁忙期以外にも、修学旅行等の団体利用があったときに「いしづち」編成が「しおかぜ」に振り返られたときにも、突発で運転されることがあり、近年では大学受験シーズン等に受験生輸送対応のために運転されたケースもある。
 突発で運転される場合は、通常運用される8000系や8600系以外の車両が使用されるケースもあり、2000系のモノクラス編成のみならずグリーン車編成や、2600系、2700系での運転実績もある。



 本来であれば、「いしづち」との分割併合を確保した上で「しおかぜ」側の編成を増結して対応するべきところであるが、増結用車両を保有する余裕が無いのと、多度津以西(多度津を含む)の区間の特急停車各駅のホームが21m級車両8両までしか対応していない(今治駅1番ホームはギリギリで9両対応:松山駅も1番ホーム以外は8両まで)ため、このような対応となっているものと思われる。


 同様な趣旨の列車として「代走しまんと」もあるが、此方は運転本数も少なく使用車種も異なり、電車が使用されることはなく気動車で運用される。

(追記)
 2022年に「代走しまんと」に初めて8600系電車が使用された。



<歴  史>


 「代走いしづち」が運転を開始したのは、当サイトの上記「いしづち」の項にもあるように、遅くとも1997年の年始からである。
 1996年のお盆は未確認で調査中であるが、同年の年末の運転は無い(年が変わってからの運転のみ)ため、無いと思われる。

 キハ185系使用で、モノクラス3両編成での運転であった。

 (JR時刻表1996年12月号より)


 1997年11月29日のダイヤ改正では、「しおかぜ」「いしづち」がいずれも各3往復づつ増発され、「しおかぜ+いしづち」の併結列車もそれまでの下り4本/上り3本から、下り10本/上り9本に一気に増えたことから、キハ185系だけでは運用を回せなくなり、同年年末シーズンからは8000系S編成も戦列に加わった。


このシーズンから新たに「代走いしづち」運用に入るようになった8000系S編成(左)
キハ185系カワウソラッピング車(右)と並んで出番を待つ

予讃線 多度津駅
1998年1月3日


「代走いしづち」運用の8000系のLED
当初から「特急 いしづち」表示であった

予讃線 多度津駅
1998年1月3日


運転開始から間もない「代走いしづち」
この当日何故かどの列車もヘッドマーク非掲出であった

いしづち6号
予讃線 讃岐塩屋〜多度津間
1998年1月3日


当時予土線で運転されていた「I Love しまんと号」用ラッピングのキハ185系を使用した「代走いしづち」
これもヘッドマーク無し

1998年1月3日
予讃線 多度津駅


↑2つ上のと同じ編成を使用した、翌日の列車
この日はヘッドマーク掲出

いしづち8号
予讃線 讃岐塩屋〜多度津間
1998年1月4日


 (JR時刻表1998年7月号より)


 1998年の恐らくお盆(※)シーズンからは、キハ185系編成はキロハ186形を組み込んだ3両編成の運転となった。
 グリーン券はマルスには組み込まれず、当日車内で空きがある場合にのみ車掌から購入することになっていた模様である。

(※)同年のGWについては未確認のため不明。なお、同年10月3日のダイヤ改正までは「うずしお」にグリーン車が連結されており、同年年末年始はともかくお盆のシーズンはキロハ186形(当時4両が在籍)はフル回転の運用だったことが想像される。


 (JR時刻表1999年12月号より)


キロハ186形組み込みの3両編成

いしづち13号
予讃線 讃岐塩屋〜多度津間
1999年8月13日


 2000年のGWからは、キハ185系はモノクラス2両編成が基本となった。
 これは、1999年にキロハ186形の内2両が「アイランドエクスプレス2」に改造されて、通常タイプのキロハ186形の残存数が2両となり、運用に余裕が無くなったためと思われる(利用が低調だったためという可能性も高い)。


キハ185系の「特急/多度津」の方向幕
遅くとも2002年年末までには同車の方向幕では既に列車名を表示しなくなっていた

予讃線 多度津駅
2002年12月


当時のケータイで撮ったので少々画質が悪いが、かつては「宇多津行」も存在した

予讃線 高松駅
2003年9月2日


代走運転時はホームが足りなくなる場合もあり、121系ローカルの背後にピタリと付ける「代走いしづち」(右側)

いしづち19号(右)
予讃線 多度津駅
2005年5月2日


留置中のキハ185系の方向幕

予讃線 多度津駅
2005年5月2日


この頃から徐々に8000系に「仕事」を奪われつつあったキハ185系

いしづち17号
予讃線 讃岐塩屋〜多度津間
2008年5月6日


いしづち18号
予讃線 讃岐塩屋〜多度津間
2008年5月6日


団体輸送対応のため突発で運転された、2000系の「代走いしづち」

いしづち20号
予讃線 讃岐塩屋〜多度津間
2009年7月4日


 小生手持ち画像で確認できる範囲では、2014年に登場した8600系が、2015年から「代走いしづち」運用に入るようになった。
 代わってキハ185系が運用を外れることが多くなった。


8000系S編成と共に多度津で待機留置中の8600系

予讃線 多度津駅
2015年7月19日


 2017年シーズンには、「代走いしづち」は基本的に8600系で運転されるようになった。
 付属2両編成のみならず、「クロハ」込みの3連が戦列に加わることもあった。


「代走いしづち」の主力的存在となっている8600系
「クロハ」込みの編成を含む3編成が並んで待機

予讃線 多度津駅
2017年7月16日


GWの代走運用のため多度津に集結した8600系の付属編成×3本

予讃線 多度津駅
2018年5月3日


久しぶりに代走いしづちに登場したキハ185系
「アイランド2」ラッピング車の2両編成

予讃線 多度津駅
2018年10月6日



2019年に運転された、大学受験生輸送対応に伴う代走いしづち(右)
2600系で運転され、大変貴重なケースであった

いしづち23号(右:左は「しまんと7号」)
予讃線 多度津駅
2019年2月25日


強風による瀬戸大橋線運転抑止解除直後に突発で運転された、
高知運転所所属の「南風」編成による、大変レアな2000形込みの「代走いしづち」

(2枚とも)
いしづち20号
予讃線 八十場駅
2020年1月8日


 2020年のGWは、Covid-19の影響によって「いしづち」編成の(「しおかぜ」編成への)連結自体が無くなり、全ての列車が下りは多度津、上りは宇多津で乗り換えとなった。
 上り列車については多度津から宇多津までは回送扱いとして、「しおかぜ」に先行するダイヤで運転される。

 以後、当分の間は「代走いしづち」が恒常状態となった。車両は本来なら分割併合されるはずだった8000系または8600系の付属編成が使用されている。
 6月からは一部列車で分割併合が再開されたが、「代走いしづち」の恒常運転状態は続いた。

 なお、同年のお盆シーズン及び年末年始は、「しおかぜ」が全列車8両運転となったことから、「代走いしづち」は8600系を主力として運用された。


「しおかぜ」に先行して宇多津まで回送される「代走いしづち」

いしづち18号(回送)
予讃線 讃岐塩屋〜多度津間
2020年10月15日


 2021年3月から当分の間、再び「しおかぜ」全列車の編成短縮と分割併合の一時廃止が行われて「代走いしづち」が毎時1本運転される体制となったことから、8000系を主力として一部8600系での運転となった。


珍しく8000系L編成で通過していった「代走いしづち」

「いしづち18号」
予讃線 国分〜讃岐府中間
2021年4月13日


代走いしづち運用に備えて多度津駅構内で待機中の8000系

2021年8月26日
予讃線 多度津駅


 2021年の秋からは、Covid-19がかなり収束してきたことから以前の運行体制に戻り、「代走いしづち」は多客時のみの運転となった。

 2021年の年末年始からは、使用車種は基本的に8600系の2両編成で、この関係で本来8600系で運転される「しおかぜ」2運用の内の1運用を、8000系が代走するという以前の体制となった。



<「臨時しおかぜ」>


 以上が「代走いしづち」のこれまでの超大まかな推移であるが、「代走いしづち」運転以前に、その前身とも言える列車としてキハ185系を使用した「臨時しおかぜ」が存在した。

 残念ながら私は撮影していないが、キハ185形に水色の「しおかぜ」ヘッドマークが掲出されて営業運転されたケースはこれだけであり、大変貴重なシーンであった。
 もし所蔵しておられる方は、後生大事に保存しておいていただきたいものである。



 1994年のGWに、岡山〜新居浜間に2往復が運転を開始。
 当初は普通車指定席とグリーン車を連結した4〜5両編成だった模様。
 なお、車両の送り込みを兼ねて、高松〜新居浜間に「臨時いしづち」が1往復設定されていた。

 (JR時刻表1994年3月号より)


 1995年シーズンは、年末年始のみ普通車が全て指定席となって自由席車の連結が無くなっているのが確認できる(お盆期間は不明)。
 なお、送り込みの「臨時いしづち」は従来通り一部自由席車連結であった。

 この年から、上りの観音寺〜岡山間ノンストップの列車が登場した。

 (JR時刻表1995年12月号より:「いしづち86号」は省略)


 1996年シーズンからは、全車普通車指定席となり、グリーン車の連結が無くなった。
 これは、1996年3月16日改正で高徳線特急「うずしお」にグリーン車が連結されるようになったことから、キロハの運用に余裕が無くなったためではないかと思われる。
 送り込みの「臨時いしづち」は、同様に普通車自由席車連結であった。

 (JR時刻表1996年3月号より:「いしづち86号」は省略)


 「代走いしづち」との併存シーズンとなった1997年は、お盆までで運転終了となり、同年年末年始からは「代走いしづち」のみの運転となった。



<「代走しまんと」>


 「代走いしづち」と趣旨を同じくする「代走しまんと」についても、ついでに触れておく。

 運転開始は「代走いしづち」よりもやや遅く、運転形態も本来「南風」に併結されるはずの「しまんと」編成がそのまま高松〜宇多津・多度津間に運転区間短縮されただけのようになる。
 想像であるが、全車が松山運転所配置車となる「しおかぜ+いしづち」と異なり、「南風」と「しまんと」はそれぞ使用車両の配置区所が高知運転所、高松運転所と分かれており、車両運用の都合によるものではないかと考えられる。

 ただし、これも突発の代走運行となった場合は普段と異なる車両で運転されるケースもあり、当方所蔵画像でもキハ185系や2600系で運転されたケースがある。


 「代走しまんと」は「代走いしづち」に比べると運転されるシーズンははるかに少なく、突発の代走を除いた多他客期の運転実績は以下が確認できる。

 1998年お盆
 2009年年末年始
 2017年お盆
 2018年GW・お盆・年末年始
 2019年GW・お盆・年末年始
 2020年GW・お盆・年末年始
 2022年お盆

 これ以外にも運転されていた模様で、近年は比較的頻繁に運転されているようである。


 1998年のお盆シーズンは、上記「代走いしづち」と同じキロハ込みのキハ185系編成が一部で運用されている。

 (JR時刻表1998年7月号より)


キハ185系復活国鉄色車で運転された「代走しまんと」

(2枚とも)
しまんと7号
予讃線 高松駅
2017年5月21日


2018〜2019年の年末年始「南風」「しまんと」分離運転で登場した2600系の「代走しまんと」
高松では同じく代走の8600系「いしづち」と並んだ

しまんと7号
予讃線 高松駅
2019年1月5日


土讃線運転見合わせによって「南風」が阿波池田折り返し運転となり、
分割併合無しの措置が執られた「南風21号(左)」と「しまんと7号(右奥)」
これは「代走」ではなく「分割併合取りやめ」というやや珍しいケースだが、
多客期の「代走しまんと」も実質的にはこれと同じような運転パターンとなっていることが多い

予讃線 多度津駅
2021年8月17日


 2022年のお盆シーズンに登場した、史上初の8600系「代走しまんと」
 なお、LEDは「特急」表示であった

(3枚全て)
しまんと7号
予讃線 高松駅
2022年8月13日








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