JR四国の車両の手歯止め掛け設置場所




 「手歯止め」(=ハンドスコッチ(略称「ハンスコ」)とは、駐車・留置中の車両が不用意に動き出さないように(転動しないように)車輪とレールの間にかませる車止めのことである。

 鉄道車両は駐車ブレーキも基本的に空気を使用するため、長時間停車中に空気が抜けてブレーキが緩解して動き出してしまう可能性がある。これを防ぐために使用するのが手歯止め(ハンドスコッチ)である。
 鉄道車両用の場合は一般的に頑丈な鉄製が多く、使用中はその旨が判るように表示をするなどしているが、ごく希に外し忘れたまま動かそうとして脱線するなどの事故も起きるため、一定以上の力が加わると壊れる構造になっていたり、鉄製以外の物があったりする。


使用例

キロハ186−1
予讃線 多度津駅
2016年1月7日

8501形
予讃線 多度津駅
2019年1月10日



 基本的には全ての車両に常備されて通常は床下に設置されているが、固定編成を組む中間車などには無い場合もあるようだ。
 車両に常設の物とは別に、設置・取り外しの便を図ってやや小振りで長い柄の付いたタイプも存在するが、このページでは車両床下に常備されている物についてのみ掲載する。

 なお、以下の内容は個人的な観察に基づくものであることをお断りしておく。


電  車

8600系
8600形公式側
8600形非公式側

 8600系は運転台のある車両の前位側(運転台側)両サイド床下に、専用取付台座でそれぞれ2個分の手歯止め掛けが設置されている。

 車両に常備されるのは通常2個のため、片側に2個まとめて搭載して片側は空いていることが多い。以下、このページで述べる同様のパターンで共通する。


 固定編成を組むためか、中間の8800形は省略されている模様。
8700形公式側
8700形非公式側
8750形公式側
8750形非公式側
8000系
8204形公式側
8204形非公式側

 8000系は貫通型先頭車については前位側両サイドの床下に専用取付台座でそれぞれ2個分が設置されている。
 ただし、L1編成5号車8401形は前位公式側の物が、またS5編成6号車の8205形は前位非公式側の物が見当たらないなど、一部に例外車両も見受けられる。

 中間車については、付随車の8300形は1位側(前位非公式側)の床下に設置されているが、8150形+8100形ユニットでは省略されている模様である。
 また、何故か非貫通先頭車の8000形と8500形では手歯止め掛けが見当たらない。


8205形非公式側

無い・・・
8401形
L1編成5号車公式側は何故か見当たらない
8404形
L4編成5号車非公式側
8405形
L5編成5号車公式側
8402形非公式側(左)
8202形公式側(右)
8404形非公式側(左)
8206形公式側(右)
中間車でも8300形は装備されている
S編成7号車非公式側
L編成の8300形にもある
(8307形:L4編成4号車非公式側)
8300形は公式側には無い
(8308形:S5編成7号車)
中間ユニットの8150形も省略されている
(8152形:L2編成3号車)
7200系
7200形
7300形

 改造種車の121系の物をそのまま使用している。

 運転助手席側(前位非公式側=第1位側)床下に、専用取付台座で2個分が設置されている。
7000系
7010形(2次車)前位公式側

昇降ステップの右に2個分がある
7003形(1次車)前位公式側

1次車ではこの部分は省略されている

 7000系は、主に松山に配置されている1次車(〜7008/〜7104)と、高松に多い2次車ではそれぞれ設置場所が異なっており、一見すると法則性がやや難解である。


 表で表すと以下のようになっている模様である。

7000形 1次車
(〜7008)
2次車
(7009〜)
前位非公式側 (1位側)
前位公式側 (2位側)×
後位非公式側 (3位側)×
後位公式側 (4位側)××

7100形 1次車
(〜7008)
2次車
(7009〜)
前位非公式側 (1位側)×
前位公式側 (2位側)
後位非公式側 (3位側)××
後位公式側 (4位側)×


 表にしてもまだ解りがたいが、図で示してみると・・・

7000形
←松山方
高松方→
(1次車)
(7001〜7008)
後位
(4位)
×
公式側
(2位)
×
前位

(3位)
非公式側

(1位)
(2次車)
(7009〜7025)
後位
(4位)
×
公式側
(2位)
前位
×
(3位)
非公式側

(1位)

7100形
←松山方
高松方→
(1次車)
(7101〜7104)
前位
(1位)
×
非公式側
(3位)
×
後位

(2位)
公式側

(4位)
(2次車)
(7105〜7111)
前位
(1位)
非公式側
(3位)
×
後位

(2位)
公式側
×
(4位)


 図で見ると、7000形/7100形とも、1次車は「山側」、2次車は「前位側」に設けられていることが一目瞭然である。

7021形(2次車)前位非公式側
7000形前位非公式側:左
7021形(2次車)後位非公式側:右

7000形2次車は後位非公式側に見当たらない
7020形(2次車)後位公式側

2次車は後位公式側も省略されている
7000形(1次車)後位公式側

この部分は1次車にも無い
7001形(1次車)前位非公式側:左
7100形前位公式側:右

7108形(2次車)公式側
7109形(2次車)非公式側
7104形(1次車)非公式側

1次車は前位非公式側が省略されている
7104形(1次車)公式側

公式側にはある
7102形(1次車)後位公式側

片運転台車の後位側にもあるのは珍しい
この反対側には無いようだ
7108形(2次車)後位公式側

さすがに不要と判断されたのか、
2次車では省略されている模様
「前位非公式側に移動した」とも言える
6000系
6000形
6000形

 6000系は、両端先頭車両の1位側の昇降ステップ横に、専用の取付台座が用意されている。

 中間車については省略されている模様。
6100形

5000系
5002形
5106形


 妻面に半永久連結器を装備して固定編成を組む5000系は、両端の運転台付き車両にのみ手歯止め掛けを装備して、中間車では省略されている。


 岡山方電動制御車の5000形は、運転助手席側(第1位側)床下の台車の枕バネの脇に専用の取付台座で2個分の手歯止めかけが装備されており、これは223系に準じたものである。


 高松方先頭の5100形も同じく第1位側に2個分・・・と、言いたいところだが、実は5100形は「運転台のある側が後位側」になるので、ここは「第4位側」になる。ともあれ、「運転助手席側」で揃えられている模様である。
 こちらは乗務員用昇降ステップの両脇に取り付けられているほか、他の同様なパターン(昇降ステップ取付タイプ)とは設置向きが異なっている。

5003形

運転台側
5101形

こちらも同様
(参考)223系5000番台
クモハ223形5000番台
クハ223形5000番台は
「後位公式側(=第4位側)」にある

↓ご覧のように妻面側(=トイレのある側)
が「前位」である

 ちなみに5000系とコンビで「マリンライナー」に運用される223系5000番台車の場合、クモハ223形は5000系5000形と同様であるが、クハ223形は「妻面側が前位」設定になっており、手歯止め掛けは「後位側(=運転台のある側)の公式側(=第4位側)」の、台車の前位側に設置されている。







気 動 車
2700系
2800形公式側


第3次車からは運転台側は省略されている
2800形非公式側

 2600系と同様に、運転台のある前位側両サイド床下に専用取付台座でそれぞれ2個分が設けられている。

 ただし、運転台側(公式側=第2位側)については第3次車(2708〜/2758〜/2803〜)から省略されている模様である。


 土佐くろしお鉄道所有車(2730/2780形)も、JR四国仕様第3次車と同じ仕様となっている。

2700形公式側


第3次車からは運転台側は省略されている
2700形非公式側

2750形公式側


第3次車からは運転台側は省略されている
2750形非公式側
2600系
2600形公式側
2650形非公式側

 8600系を踏襲しており、前位側両サイド床下にそれぞれ2個分が設けられている。

2602形非公式側(左)
2651形公式側(右)

2000系
2006形
2113形

 2000系気動車は、中間車も含めた全車両とも前位非公式側(=第1位側)床下の燃料タンク脇に2個分が設置されている。

 通常は乗務員用昇降ステップ脇に取り付けられることが多いが、振子式の2000系は昇降ステップ自体が通常の車体側取付でなく台車取付という特殊な構造のため、手歯止め掛けもやや特殊な場所に設置されている。

 取付位置に関しては、N2000系は量産車よりもやや低い位置になっており、作業性を考慮したものではないかと想像される。
 ちなみにN2000先行試作車は量産車と同じ位置となっている。
 また、試作車TSEは取付位置は量産車とほぼ同じであるが、取付向きが90度異なり、そのうえ1個分だけとなっている。

 さらに、通常固定編成を組む電車では中間車への設置が省略されているケースが散見されるが、2000系は中間車も1両単位で運用されることも多いことから、中間車も必ず手歯止めが搭載されている。
2119形
2204形
N2424形

N2000先行車は量産車と同じ位置
N2428形

取付位置の違いに注目
TSE2001形

向きの違いに注目、数も1個少ない

キハ185系
キハ185−17
キハ185−22

 キハ185系は前位非公式側(=第1位側)の昇降ステップ向かって左側に1個分のみ設置されており、通勤改造の3000番台車やその他の改造車も同様。

 中間車については、キロ186形については前位側(=旧グリーン室側=車掌室のある側)の非公式側(=第1位側)床下の昇降ステップに1個分が設けられている(アイランド2&千年ものがたりとも)が取付向きがアイランドとものがたりとでは逆になっている。
 なお、キロハ186形については設置されていない。
キハ185−3106
キロ185−1001
(千年ものがたり)
キロ186形
(アイランド2)
キロ186−1002
(千年ものがたり)
アンパンマンキロハ186形は
省略されている
種車であるオリジナルのキロハにも無い
1500形
新潟製1506形(1次車)前位側
新潟製1551形(3次車)後位側

 1000形の第2次車以降を踏襲。

 前・後位側両方の運転台側(=第2位側と第3位側)の乗務員用昇降ステップの両脇に2個分の手歯止め掛けが設けられている。

 新潟製も近畿製も同じ。
近畿製1567形(7次車)前位側
近畿製1567形(7次車)後位側
1200形
前位側
後位側

 1000形の改造で生まれた1200形は概ね1000形を踏襲しており、前後両方の運転台側(=第2位側と第3位側)に設置されているが、前位側(第2位側)は電気連結器化に伴って増設された機器との干渉を避けるためか、向かって左側の物が撤去されて1個分のみとなっている。
1000形
1027形前位側
1007形後位側

 1000形気動車は前後両方の運転台側(=第2位側と第3位側)に設置されているが、設置数が第1次形(1001〜1028)とそれ以降の車両で異なり、第1次形は乗務員用昇降ステップの向かって右に1つだけ、2次車以降は2つ分が設けられている。
1034形前位側
1051形後位側
キハ54形
↓キハ54−1 前位側

↓キハ54−4 前位側
キハ54−3 後位側

 前後両方の運転助手席側(=第1位側と第4位側)の昇降ステップ向かって左側に、それぞれ1個分づつ設置されている。
キハ32形
新潟車 後位側
富士重車 後位側
キハ32−12

 基本的にキハ54形に準じており、前後両方の運転助手席側(=第1位側と第4位側)に設けられているが、昇降ステップ向かって右に付いている点が異なる。

 また、富士重車のうち最終ロットの19〜21号車の3両は、昇降ステップとは別の専用取付台座が設けられている。
富士重車 前位側
キハ32−16
キハ32−19(富士重車)後位側
キハ32−20(富士重車)後位側
キハ32−21(富士重車)前位側
キクハ32形
キクハ32−501公式側
キクハ32−501非公式側

 片運転台のキクハ32形は、前位側(運転台のある側)の床下両サイド(=第1位側と第2位側)の昇降ステップ向かって前位側にそれぞれ1個分ずつ、手歯止め掛けが設けられている。


 蛇足であるが手歯止め自体にもちゃんと「名前」が書かれている。
 
キクハ32−502公式側
キクハ32−502非公式側
キハ40系
キハ47−1119
キハ47−503

 キハ40系の場合は、各形式とも運転助手席側床下(=キハ47形の場合は第1位側、キハ40形の場合は第1位側と第4位側)という点は共通であるが、キハ47形の0/1000番台車と500/1500番台車では取付位置が若干異なり、前者はスカート部分に、後者は昇降ステップ部分に取り付けられている。

 なお、500/1500番台車ベースで改造されたキロ47形「伊予灘ものがたり」は、種車の物をそのまま使用している。
キハ40形前位側
キハ40形後位側
キロ47形









検索サイトから直接来られた方は、ここをクリックしてTopに移動できます