DF50形 電気式ディーゼル機関車
四国国鉄無煙化推進の立役者


多度津工場で保存中だった当時のDF50−1
2003年10月19日



 トンネルの多い非電化路線における旅客列車の無煙化のため、それまで活躍していたD51形やC57形といった比較的大型の蒸気機関車(SL)に替わる本線用のディーゼル機関車として1957年に登場した。

 当時はまだ本線用ディーゼル機関車としての使用に耐えうる大型液体変速機の技術が確立していなかったため、車両に搭載したディーゼル機関によって電気をつくり、その電気を駆動力として使う電気式が採用された。簡単に言えば「自家発電装置を搭載した電気機関車」で、スルザー型機関(1060ps)を搭載した0番台車がまず登場し、高松機関区に配置されて活躍を開始した。
 このほか、マン型機関を搭載した試作機DF40形(後のDF91形:1956年/1200ps)やDF90形(1957年/1680ps)が製作され、DF50形についてもDF40形と同じ1200ps機関を搭載した500番台車が1958年に登場。

 0番台車が65両、500番台車が73両の合わせて138両が製造され、北海道を除く全国の非電化幹線・亜幹線で活躍したが、性能面では中型の蒸気機関車を置き換えるにとどまり、C62形やD52形などの大型機の置き換えには性能不足であったほか、1962年に純国産技術による本線用液体式ディーゼル機関車・DD51形が登場したことから、DF50形は活躍の場が狭められることになる。
 当時の技術では、電気式は液体式に比べてエネルギー効率が低い他、出力の割に重量が重くなり、製造コストが割高になる上に保守にも手が掛かることから本線用ディーゼル機関車としてはDD51形が主力となり、国鉄時代はこのDF50形を最後に電気式ディーゼル動車は途絶えた。


 登場当初は茶色の車体に白のラインであったが、1963年から国鉄DLの標準塗装である、オレンジとグレーのツートン+白帯に順次塗り替えられていった。
 塗色変更完了時期は定かではないが、1965年頃までには塗り替え完了していたようだ。


<四国のDF50形>

 四国へは1957年から土讃本線を中心に投入が始まり、1957年から63年までは当時客車で運転されていた準急「南風」「土佐」の牽引も担当した。
 トップナンバー1号機も新製当初は高松機関区の配置であった(後年一時的に本州に渡ったが、ほどなく四国に戻っている)。

 1963年の準急「南風」「土佐」気動車化以後は、ローカルおよび貨物列車のみの仕業となったが、1980年頃まで運転されていた旧型客車編成の臨時急行列車の先頭に立つこともあった。

 1978年に四国で初めて松山地区に50系客車が投入されたが、1981年までの間はDF50形が牽引しており、これがDF50形が50系を定期列車として牽引した唯一の例となっている。
 最盛期は1980年頃で、全製造数の約1/3に当たる44両が高松機関区と高知機関区に配置されて活躍していた。

 晩年は貨物専用機として運用され、斗賀野貨物線での重連運用が有名であるが、通常の貨物列車でも重連運用は比較的よく見られた。



 1978年に山陰地区、1979年に日豊本線、さらに1980年に紀勢本線での運用が終了すると、残るは四国のみとなった。

 その四国地区においても、老朽化による客車暖房用の蒸気発生装置(SG)の不具合が増えてきたため、1981年から82年にかけて旅客列車牽引の任をDE10形に引き渡した。
 移行期間中にはDE10形の訓練運転のため、前位DE10+後位DF50という重連運用も多く見られた。

 この流れの中で、1982年に500番台マン形がひっそりと姿を消した。

 1983年8月に「DF50秘境号」として、また同年9月に「サヨナラDF50土佐路号」として運転したのを最後に現役を引退した。
 その後全車除籍(廃車)されたが、0番台のトップナンバーであるDF50 1号機だけは解体を免れて準鉄道記念物に指定され、保存されることとなった。


 なお、四国全域で活躍したイメージのあるDF50形であるが、実際は予讃本線(高松〜伊予市間)と土讃本線のみの運用であった(恐らく軸重の関係と思われる)。



「DF50秘境号」(2日目)

土讃本線 阿波川口駅
1983年8月21日
「サヨナラDF50土佐路号」

土讃本線 琴平駅
1983年9月25日

 両列車とも、旅客営業上の列車種別は「普通急行列車」として運転され、9月の「土佐路号」はDF50形にとって最後の急行列車運用となった。



 この1号機、JR化後に車籍が復活して、名目上は本線走行が出来る状態となっているが、実際の車籍復活後の本線(自力)走行の実績はなく、通常は多度津工場内で保管され、鉄道の日などのイベントで工場構内を走行する程度であったが、2007年のに伊予西条に四国鉄道文化館がオープンしたのに伴い、同館を運営する(財)日本ナショナルトラストに貸し出されて展示されている。

 なお、現在伊予西条で展示されている1号機は、(1)屋根肩部の雨樋およびその縦樋が存在しない (2)正面手すりが取付ネジの部分まで白く塗装されている 等、現役当時を細部が異なっている点に(特に模型での再現等にあたって)留意が必要である。



 四国のDF50形はその数もさることながら、四国独自の改造箇所が多岐にわたり、外観的にも大きな特徴となっていた。

 踏切事故に備えた前面補強、前面手すりの大型化、開放てこの延長、エアフィルタの交換などの目立つ部分の他、区名札挿しの位置変更やタブレット保護枠の追加などもあり、これらの改造が施されたものを「四国スタイル」などと呼ぶことも多かった。
 ただし、これらについては四国配置の全機が施されたわけではなく、転入時期の関係などで未施工であったり、また一部のみ施工された車両もあった。

 また、スカートのステップ部分を避けた小型のスノープロウも四国独自の装備であるが、これは同じ車両でも夏期は取り外している場合もあった。

 この他、土讃本線では重連運用があったことから、取扱の便宜を図るために第2位側(上り方)の向かって右の後部標識灯の左脇に、重連用カプラー栓受けを設けている。



予讃本線 高松駅
1979年

 旅客列車を牽引して高松に到着した19号機。
 向かって右側の後部標識灯の左に見えるのが、重連用カプラー栓受け。

土讃本線 讃岐財田駅
1981年9月

 高知行貨物281レを牽引して讃岐財田を通過する24号機。

 前面補強は未施工であったが、手すり大型化・開放てこ延長などの四国スタイルの特徴が見える。

土讃本線 讃岐財田駅
1982年3月

 四国独自の小型スノープラウを装備した48号機。

予讃本線 多度津駅
1982年11月

 予讃本線貨物を牽引して多度津駅で発車待ち中の50号機。

予讃本線 多度津駅
1982年11月14日

 これも典型的「四国スタイル」の52号機。

土讃本線 塩入駅
1983年8月20日

 1983年8月に運転された「サヨナラDF50秘境号」の1日目の下り列車。
 1日目と2日目はヘッドマークの取付位置が異なっていた。

土讃本線 讃岐財田駅
1983年8月20日

 運用終了を間近に控えて、高知行貨物273レを牽引する「四国スタイル」の44号機。

土讃本線 小歩危駅
1983年8月21日

 1号機(左)と65号機(右)の重連連結部。
 前照灯の位置、前面窓の大きさ、貫通路部分の手すりと貫通路ステップの形状、屋根高さなど、随所に差違があるのが判る。

1983年8月

 見れば見るほどに違いのある、1号機と最終増備機。
 運転台屋根や側面の雨樋の形状なども異なっているのが判る。

土讃本線 阿波川口駅
1983年8月21日

 下り方に向かって左側側面。
 1号機(画像奥)と65号機(同手前)の車体裾部の配管の差違に注目。

土讃本線 黒川〜讃岐財田間
1983年8月

 亀山からの転属機、34号機。
 前面補強無しで、手すりも小さいタイプとなる。

土讃本線 讃岐財田駅
1983年8月

 前面補強、エアフィルタ交換、手すり大型化、開放てこ延長、重連対応、区名札挿しの位置変更などの改造が施された、「四国スタイル」の44号機。

予讃本線 多度津駅
1983年9月

 多度津駅構内で廃車留置中のDF50形。

多度津工場

 1号機の前位側(左)と後位側(右)の比較。
 後位側は後年の事故復旧の際に窓が量産車と同じサイズの物に更新されており、本来のサイズである後位側よりも若干小さくなっている。

大阪交通科学館
2000年11月11日

 大阪・交通科学館で保存されていた頃の18号機。



 四国内での事故廃車も発生しており、1972年7月の繁藤災害では45号機が被災した。
 復旧にあたって改修・修理は断念され、同機は現地で解体されて、銘板だけを国鉄職員が持ち帰った。それ以外は主要な部品のみ回収されたとのことで、今でも一部が穴内川の川底に埋まったままだという。

 こちらの現場画像【時事ドットコム写真特集(別ウィンドゥで開きます)】の左上には、上下がひっくり返った状態の大破したDF50形が、その下には車体から外れた台車が同様に裏返しの状態で転がっており、これは全回収を断念してもやむなしと思えるほどの状況である。

 この45号機の銘板は多度津工場内で保管されており、工場一般公開の際に閲覧・撮影が可能となっている。


「繁藤災害」で被災した45号機の銘板は、
現在も多度津工場内で保管されている




形式DF50形
寸法16,400 mm
2,932 mm
3,980 mm
重量84.0 t
車体普通鋼
機関形式
出力
スルザー形 8LDA25A
1,060PS/800rpm
電動機形式
出力
MT-48
100kw × 6
歯数比4.235
ブレーキ方式 発電ブレーキ付
EL14A空気ブレーキ
ブレーキ装置踏面片押
台車形式前後 DT102
中間 DT103
許容最高速度90km/h

※さらに詳細はスペック一覧表参照

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