キハ54形 一般形気動車


土讃線 黒川〜讃岐財田間
2006年1月28日


 国鉄民営化を目前に控えた1987年3月、四国内の輸送改善(旧型車の置き換えと輸送効率化)を目的に投入された勾配線区向け気動車で、主に勾配のある山岳路線で使用される。

 全長は21.3mと大型で、エンジンは同時期に作られたキハ185系やキハ32形と同じものを2基搭載(水冷直列6気筒13リッター インタークーラー付きターボチャージャー/250ps×2)しており、加速性能は特急形のキハ185系とほぼ同等。

 軽量化のために車体はステンレス製とし、製造コスト削減のために、台車や変速機などの足回りの機器は廃車発生品を流用している他、出入口扉や窓ガラス、空調装置はバス用の部品を使用している。
 室内はロングシートで投入地域の実情に合っているとは言い難く、いかにも短期間で設計された急造感が残るが、車体はさすがに頑丈な模様。

 12両が製造され、当初は全車両が松山運転所(当時:松山気動車区)の配置となっていた。
 キハ32形と同様に新潟鐵工製と富士重工製があるが、両者の外観・仕様上の相違は基本的に無く、あえて1点挙げるとすれば放送用ジャンパ栓受けの部分の処理が両社で異なっている。


 新潟鉄工製と富士重工製の外観上唯一と言って良い識別部分は、正面向かって左下にある放送用ジャンパ栓受け周りの処理。
新潟鉄工製の1号車
富士重工製の7号車



(塗色変更)

 民営化後の早い時期に、現在のカラーリングに変更されている。


(ワンマン対応改造)

 投入時はワンマン機器は搭載していなかったが、1988年4月改正に合わせて対応改造が行われた。


(試験警戒色)

 1993年に前面に赤い塗装が追加された警戒色がキハ54−1の1両にのみ施工されたが、1年ほどで元に戻されている。
 これは他社での重大な踏切事故発生を受けて試験的に行われたもので、四国でも本形式の他にキハ65/58/40形のほか1000形や121系にも施されたが、大きな効果は認められなかった模様である。
 四国ではさらに後年(1996年)に、前照灯の常時点灯施策に移行している。


(前面方向幕更新)

 運転席側の方向幕は、登場当初は列車種別を表示していたが、1998年の秋から遅くとも年末までの間にかけて、全て行先表示に変更され、同時にサボの使用をやめている。


キハ54−10

土讃線 窪川駅
1987年4月7日

 当初は松山地区にのみ投入されたため、登場当時は愛媛県名産のみかんにちなんでオレンジの斜めのラインが入っていたが、その後はJR四国色のコーポレートカラーであるスカイブルーの塗装に改められている。

 同時期に製造されたキハ185系と同様に、列車無線アンテナの取付準備工事済みであり、屋根上にチラリと取付台座が見えているのが判る。
複線区間を行くキハ54×2連のローカル

予讃線 宇多津〜丸亀間
1993年9月

 かつては高松〜多度津間の複線区間に乗り入れて高松まで顔を出していたこともあった。

無線アンテナ搭載

土讃線 高知駅
1996年9月9日

 キハ54形への列車無線アンテナ搭載時期は比較的遅く、1993年度末であった。

 キハ185形と同様に、予め用意されていた取付台座に設置する方法で搭載されている。
オレンジの痕跡

土讃線 高知駅
1996年9月9日

 この頃はまだ、ステンレスの車体側面には登場時のオレンジ色のラッピングを剥がした痕跡が明確に残っていた。

土讃線 新改駅
1997年6月8日

 新改を通過するキハ54形単行のワンマン列車。
かつて存在した定期列車3両編成

土讃線 讃岐財田駅
1999年5月1日

 当時の土讃線232Dはキハ54形3両編成が所定編成であり、定期列車で同車のみで編成された列車としては最長記録となっている。

 前面方向幕は1997〜98年頃(詳細時期不明)に、列車種別表示から行先表示に変更され、同時に側面のサボの使用をやめている。

土讃線 高知駅
2000年1月31日

 高知地区の区間ローカル列車。
 キハ28形との2両編成で、両車の出力差は約3倍!
かつてのトロッコ列車

予讃線 北宇和島駅
2003年8月10日

 予土線のトロッコ列車は性能の関係でキハ54形の限定運用となる。

 上画像はキハ54−10だが、2013年10月以降はキハ54−4が限定運用という形でトラ45000形貨車ともども黄色い塗装に変更リニューアルされて運用に就いている。

多度津工場線
2003年10月19日

 キハ32−14と共に、多度津工場一般公開での多度津駅〜工場間のシャトル列車として運用されたキハ54−1。

予讃線 松山駅
2006年10月22日

 予讃線・内子回りのローカル列車。
 勾配区間に対応した強力編成。
パイプガード取付

土讃線 豊永駅
2015年4月5日

 2014年頃に、全車両について野生動物の床下への巻き込みを防止するためのパイプガードが追設されている。


予讃線 多度津駅
2018年1月11日

 4号車は現在、予土線の黄色い「しまんトロッコ」仕様となっているが、「異端ジャンパ栓受」は健在。

予讃線 松山駅
2018年3月7日

 南予地方観光宣伝のラッピング車両、にゃんよ号。

予讃線 本山〜観音寺間
2020年3月5日

 ピカピカの綺麗な姿で松山へ向かう、検査出場試運転のキハ54−8。

予讃線 伊予平野駅
2020年5月24日

 山間の駅で並ぶ、キハ54形ワンマンローカル。

予讃線 松山駅
2022年3月17日

 「宇和海」(左)と並んだ、「しまんと開運汽車・すまいるえきちゃん号」のキハ54−6(右)。





運転台
客室


 バケットタイプのロングシート。
台車


 廃車発生品を再整備したDT22を履く。
 これは前位側の台車で、排障器付きフランジ塗油装置が付いている。
台車


 後位側の台車はフランジ塗油装置が省略されている。
ドアロック装置


 キハ54形には、走行中に誤ってドアが開放しないようにドアロック装置が設けられている。
 発車直後と停車直前に「バチッ!」というかなり大きな音を立てる。

 左がアンロック状態、右がロック状態で、比較的単純な構造となっている。
どっちが「前」?



 キハ54形は四国に在籍した車両の中でも、筆頭格に「前後」の判別が難しい車両。
 さて、上の画像のどちらが「前」でどちらが「後」かすぐに判るであろうか?

※答はこのページ一番最後


 製造メーカーが2社あるだけでなく、国鉄発注とJR四国発注があり、また発注者の銘板が撤去されている車両もあり、全部で6つのバリエーションがある。
 車番毎の対応表は↓下表参照。

 なお、JR四国は正式社名に通常の「金失」の文字を採用しているが、製造銘板の文字は他のJR各社が採用している「金矢」表示となっている。


 キハ54−4については、第2エンド側のジャンパ栓受けが何故か他車と異なる文字通りの異端タイプとなっている。
 なお、上り方のジャンパ栓受けは他車と同じタイプとなっている。


銘板の対応表
(2019年10月現在)
車 番
製造銘板
発注者銘板
備考
キハ54−1
新潟鐵工所
日本国有鉄道

キハ54−2
四国旅客鉄道

キハ54−3
四国旅客鉄道

キハ54−4
(無)
変形ジャンパ栓受
キハ54−5
(無)

キハ54−6
(無)

キハ54−7
富士重工
四国旅客鉄道

キハ54−8
(無)

キハ54−9
四国旅客鉄道

キハ54−10
日本国有鉄道

キハ54−11
(無)

キハ54−12
四国旅客鉄道




〜小ネタ〜
アンパンマンステッカー

 2000年の10月14日に土讃線で2000系「アンパンマン南風」が運転開始するのに合わせて、高知地区の普通列車にもアンパンマンシールを貼付することとなり、当時高知運転所在籍のキハ54形気動車12両全車(と、1000形気動車16両全車)にアンパンマンのキャラクターシールが貼付された。
 前後の貫通扉部分にヘッドマークのように貼られ、ナンバーとキャラクターの対応は下記の通りとなっており、ナンバーが見えなくても車番を特定できる手がかりとなっていた。


 途中、2005年にデザイン変更が行われているが、7/8/12号車の3両はキャラクターも変更となっている。
 変更された時期は明確ではないが、手持ち画像からは2005年度に入る前後に貼り替えられた可能性が非常に高い。


 貼付されていた期間はかなり長期に及ぶが、当時から本形式を狙って撮っていたわけではないので剥がされた時期については不明で、当方手持ち画像で貼ってあるのが確認できるの最後のものは2014年4月27日の1号車(当時高知配置)となっている。
 また、2015年度まで同じく高知配置だった2号車は2015年4月5日の段階で既に剥がされているのが確認できており、最後まで高知に残った3両(1〜3号車)についても2014〜2015年度あたりに剥がされた可能性もある。

 一方、キハ54形は2007年度から2015年度までにかけて12両全車が順次高知運転所から松山運転所に転属しているが、一部の車両は転属した後も少なくとも2008年10月までは貼ったままの状態であったのが手持ち画像から確認できている一方、松山配置車についてはその後相当期間全く撮影する機会が無かったことから、いつ剥がされたのか明確な時期は不明であるが、各種調査から高知配置車と同じぐらいの時期まで貼っていたことが判明しており、2018年10月末時点でも剥がした痕跡が明瞭に残っている車両も相当数見受けられた。


車番キャラクター備考車番キャラクター備考
キハ54−1アンパンマン2015年度末、四マツへキハ54−7 ジャムおじさん

こむすびまん
2007年度末、四マツへ
キハ54−2カレーパンマン2015年度末、四マツへキハ54−8 バタコ

かつどんまん
2007年度末、四マツへ
キハ54−3しょくぽんまん2015年度末、四マツへキハ54−9チーズ2007年度末、四マツへ
キハ54−4メロンパンナ2011年度末、四マツへキハ54−10ロールパンナ2007年度末、四マツへ
キハ54−5ばいきんまん2011年度末、四マツへキハ54−11ホラーマン2007年度末、四マツへ
キハ54−6ドキンちゃん2007年度末、四マツへキハ54−12 赤ちゃんまん

かまめしどん
2007年度末、四マツへ


 なお、同様なシールは同じ高知運転所所属の1000形にも貼付されていた。


 蛇足であるが、この期間中2003年10月19日の多度津工場まつりで、キハ32形とともに多度津駅〜工場間のシャトル列車に使用された1号車は、アンパンマンのシールの上から「きしゃぽっぽまつり シャトル列車」のヘッドマーク(マグネットマット)を貼り付けて運用された(下記画像参照)。


※なお、このアンパンマンシールを狙って撮った画像は皆無であり(偶然撮っていたものばかりであるw)、後年に画像から追跡調査したものであるので、一部に酷い画像があるのはご容赦願いたい(苦笑

キハ54−1
キハ54−2 と キハ54−8


 残念ながらこの2両だけは、当方手持ち画像では変更された後の画像しか確認できない。
 ちなみに、2号車はデザイン変更前もカレーパンマンだったが、8号車はバタコさんであり、キャラクターが変更されている。
キハ54−3
キハ54−4
キハ54−5
キハ54−6


 ポーズはよく似ているが、右手の位置や顔の角度が異なり、カラーリングも変更されている。
キハ54−7


 7号車は当初はジャムおじさん(左)だったが、途中でこむすびまんに変更された(右)。
キハ54−9


 貼り替えタイミングがかなり絞り込める貴重な例。
 同じ年の、左が2月12日、右が5月2日で、右か非常に真新しいことから、年度替わりのタイミングで貼り替えた可能性が非常に高い。
キハ54−10


 ドキンちゃん以上に違いが判りにくいロールパンナ。
キハ54−11
キハ54−12


 12号車はあかちゃんまんからかまめしどんに変わっている。


 工場まつりのシャトル列車に運用された1号車は、アンパンマンの上から専用HMをペタリ(2003年10月19日撮影)。


 2007年度末で松山へ異動した8号車だが、転属後も貼ったままであった。


 手持ち画像で最後にシールが確認できる例。
 2014年4月27日、阿波池田駅停車中の当時高知配置の1号車。


 当時高知配置の2号車は、2015年4月5日時点で既に剥がされていた。


 剥がした跡が明瞭に残っている当時松山配置の10号車(2018年10月25日撮影)。
 同車は2007年度に高知から松山へ異動していたはずの車両であるが、この当日はこれ以外にも、このように明瞭に痕跡が残っていた車両が4両確認されている。



<その後の運用等>

 2011年3月改正では、54&32の独壇場となっていた、土讃線・琴平〜阿波池田〜土佐山田間(佃〜阿波池田間を除く)での主力の座を1000形気動車に明け渡しており、琴平〜阿波池田間では夜の1往復のみとなった。
 その代わり、従来は1往復のみだった土讃線・高知以西の区間の運用が大幅に増加しており、窪川までの運用が復活している。


 2014年3月末現在、高知に1〜3の3両が、残り9両が松山に配置されて、勾配区間を中心に運用中。


 2016年3月改正で、1両が高知から松山に転属の可能性が濃厚。
 松山所在籍車は、予讃線・松山以南でキハ32形と共に主力として活躍しているほか、予土線はキハ32&54の独壇場となっている。
 特に、33パーミル勾配の続く予讃線・八幡浜〜宇和島間の普通列車は、キハ185系で運用される2往復を除いた全列車に充当されている(うち1往復はキハ32形と併結)。
 高知所在籍車は少数派で、土讃線での運用は9本のみとなっている。


 2019年3月改正時点では、12両全車が松山運転所に集められて土讃線での運用が消滅し、予讃線松山以南と予土線のみの運用となった。



<予讃線 キハ54形使用編成列車>
 (2021年3月13日改正)

 621D/627D/915D/653D/923D/925D/667D
 620D/912D/622D/624D

 編成列車は全てキハ32形との連結で、912D/622D/667Dは3両編成となる以外は2両。
 これ以外は全てワンマン単行列車となる。


形式車体キハ54形
(キハ54−1:八幡浜駅:1-4位側(=山側))
 ほぼ完全な前後対象で、パッと見ただけでは車両の前後が判別できない。気動車でこのような車両は珍しい。
 ちなみに製造銘板は「後位側」に付いている。
屋根上
 屋根上は、同時期に製作されたキハ185形とよく似た機器配置。
 冷房装置、ベンチレータとも同じ物を搭載している。
製造元 新潟鐵工所
富士重工
寸法21,300 mm
2,920 mm
3,845 mm
重量37.2 t
車体ステンレス
機関形式
出力
DMF13HS
250PS/1,900rpm × 2
変速機 TC2A 又は DF115A
(変速1段・直結1段手動変速)
最終減速比2.976
燃料タンク400L×2
ブレーキ方式 機関ブレーキ付
DA1A
ブレーキ装置踏面片押
台車形式DT22G
許容最高速度95km/h
車体構造・客室2扉ロングシート
乗車定員148(座席:68)

※さらに詳細はスペック一覧表参照


※前後の判別=上のキハ54−1は画像向かって左、下のキハ54−4は同じく右が「前」である。銘板や前位側表記が見える状態ならすぐに判るが、そうでなければすぐに前後を判別するのは非常に難しい。
(判別ポイント1)定圧空気ダメ(燃料タンク近くの小さな丸いタンク)が見えるのが「非公式側(第1−4位端側)」なので、その状態で「向かって右が前」である。
(判別ポイント2)屋根上に上がるための梯子が設置されているのが「第4位端」で、これがある方が「後」になる。


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